主人と僕の旅路 3
□神楽の命
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ずっしりと重くて暗い感情が自分の中に積もっていく。
もし、もしも。ここで神楽を助けなかったら?
神楽は殺生丸さまと結ばれることもなくなる…。そうしたら、殺生丸さまは私とずっと一緒にいてくれるかもしれない。上手くいけば私のことを選んでくれるかもしれない。
殺生丸さまだって放っていけって言ってるじゃん。ここで放っておいても私は、責められない。
黒い感情が心を支配していく。
―いや、ダメだ。絶対そんなことしたら、ダメ―
モヤモヤを振り払うように首をブンブンと横に振る。
「助けなきゃ」
自分に言い聞かせるように呟く。
着物の裾を持ち上げて川に入っていく。
「おい、鈴」と邪見の声が聞こえるけど、無視無視。
グイっと腕を引っ張るが、私の力じゃどうにも動かない。
どうしよう…。
その時、ザバザバと音を立てて殺生丸さまが近付いて来る。
「…」
「え、殺生丸さま?」
「…貸せ」
貸せって…。
神楽を?
神楽から腕を離して、殺生丸さまに託す。
そして殺生丸さまは一言も発せず、神楽を抱えて陸に上がった。
「…」
殺生丸さまが神楽を…。
…。
やっぱり嫌だ…。