「痛っ」

「おい、タケ大丈夫か?」

「すみませんっ」


部内で練習試合をしていたら、相手の投手の投げた球が足に当たってデットボール。


「全然大丈夫です。お前も、大丈夫だからそんな顔すんな」

「本当にすみませんでした」


痛みが無いわけじゃないけど、これくらいたいしたことない。
練習試合とはいえ真面目にやってるんだ。こういうことは合る。
このチームの4番を打たせてもらっているんだから、頑張らないといけない。

5・6番が打って、この回は2点入った。




試合は4‐3でこっちのチームがリードしてる中、8回の相手の攻撃を迎えている。


「………っ」


すぐに引くと思っていた足の痛みは、引くどころか痛みを増して来た。
当たり所が悪かったのかもな。

後2回なんだ。…我慢しよう。


「和ー、ごめん選手交代。誰かタケと変わって。タケはこっち」

「えっ」

「おぉ、ほらタケ早く行け」

「……はい」


わけがわからないまま、俺は先輩に付いて行く。
前を歩く先輩は何も教えてくれない。
残り2回を頑張ろうと決意したばっかりだったんだけどな。

着いた先は部室だった。
座って待ってて。と言われたので、素直にソファに座っている。
先輩は棚から何かを探していたかと思うと、救急箱を手に取り俺の所まで戻って来た。


「足、見せて」

「えっと…」

「さっきデットボールを受けた部分。痛いんでしょ?」


誰にも気付かれないように、痛みを表情にも動作にも出さないようにしていた。
準太と同じように試合中の俺はポーカーフェイスで、自分で注意していれば気付かれることはないと思っていた。

この人は、それが当たり前であるかのように気付き、手当てをしてくれている。


「練習試合なんだから、あんまり無理しないでよね」

「あの、先輩」

「んっなに?」

「なんでわかったんですか?俺が無理してるって」

「だって私、みんなのマネージャーだよ」


先輩が向けて来たまっすぐな瞳に引き込まれそうになった。
微笑んだその姿に、心が跳ねたのを感じだ。




  


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