*頂き物*
□約束
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朝が、来た。
そう、この日がとうとう訪れたのだ。
傍らで笑む少女の頭を優しく撫でながら、彼女――希望は思い出す。
60年前の日々を。
力強く美しい森の中で、木漏れ日に照らされ、妖精達と楽しく過ごした日々を。
それはある日、人間の犯した過ちにより唐突に終わってしまったけれど。
(……人間のせい、そう、私達人間のせいによって)
偉大なる空を汚し、尊き命を奪い、
母なる水を汚染し。
そして自然は悲鳴をあげ――
妖精達は苦しんだ。
人間は妖精達と共存しなければいけないのに、彼等を傷付け、苦しませ、悲しませている。
だから希望は森を出たのだ。
あれから妖精達を救えるように沢山学んできた。
そしてどうすれば共存の道を歩めるか彼女は精一杯考えて、
植林団体を指揮し、数多くの森を再び豊かにしてきた。
きっとこれで良い。
希望は植林団体で共に活動した仲間達と微笑みながら緑豊かになった森を見て、そう確信した。
そして、
コンコン。
扉を――ノックする音が聞こえた。