novel
□鬼ごっこ
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昔から人付き合いが苦手で、愛想も悪い。
小学校でも中学校でも高校でも、友人は多くなかった。
だから一ヶ月前、「成人式のあと六年四組のメンバーで温泉に行こう」と電話がかかってきた時は、他の誰かとかけ違えていないかと疑ってしまった。
海沿いを走る快速列車の中、俺がそう話すと、向かいに座るインテリ眼鏡は心配し過ぎだと言って笑った。
その言葉を聞くために、俺は身を乗り出さなければならなかった。
コンパートメントはかつてのクラスメイトたちによってほぼ貸切り状態と化していた。
どんちゃん騒ぎは嫌いではないけれど、その中に混じりたいとも思わない。
この歳でよくぞここまではしゃげるものだと逆に感心してしまう。
一度車掌が注意しに来たが、状況を一目見るなり首を振りながら戻って行ってしまった。
俺は窓の外を見て、長谷部は無意味に携帯を開け閉めして過ごした。
「お」
「何?」
「紺野からメール来た」
目の前に突き出された画面から顔を離し、揺れる文字に目を凝らした。
『仕事終わってから向かう。ホテルに着くのたぶん八時頃。』
「宴会に間に合えばいいけど。あいついたら絶対盛り上がるっしょ」
「だな」
頷いて再び座席にもたれると、長谷部は大仰に溜息をついた。
「ずいぶん素っ気ねえのな」
軽く睨むと、長谷部は悪びれた風もなく肩をすくめた。
いつまでもにやにや笑っているから、到着までずっと窓の外を見てやり過ごした。