瑠璃の祭壇

□花火
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コッ、コツッ………

「…………。」
ベランダの窓に小さく響く音に柳生は広げていた教科書から顔を上げた。

コツッ…………

「…………。」
明らかに何かをぶつける音に柳生は席を立ち、カーテンを開けてベランダに出る。
「おーい!。」
見下ろせば道路からヒラヒラと手を振る夜目にも鮮やかな銀髪の人影が街灯に浮かび上がっている。
「仁王くん……。」
どこか諦めにも近い呟きを洩らし、ガクリと肩を落とした。しかしそんな柳生の様子をよそに道路から仁王は叫ぶ。
「柳生ー、花火しようやー。」
白いビニール袋を振り回して楽しそうに手招く。
「降りて来んならココで火い点けるぜよ?。」
ロケット花火の束をちらつかせた仁王に慌てて身を乗り出した柳生は釘をさすように
「すぐ行きますから、おとなしくしていてくださいっ!。」
と叫んで踵を返した。
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