小説部屋

□雷鳴 28
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窓を震わせる音の余韻と大気を洗うように降りだした大粒の雨に、仁王は詰めた息を吐き出した。
「なんじゃ、夕立か……。」
閃く光を眺めながら呟き
「凄い音じゃのぅ、柳生。」
返事を求めるように隣を見やった。が、
「柳生?。」
「っ………。」
仁王は目の前の光景にぱかっと中途半端に口を開けて、小さくなっている相方を見つめる。
「………柳生?。」
もう一度確認するように相手を呼んでみたが、雷鳴が響くたびに耳を塞ぎうずくまって身体を震わせるばかりで返事はなかった。
「オマエさん、雷が怖いんか?。」
顔を近付け耳元に囁くように尋ねた仁王に踞っていた柳生はぱっと体を起こし
「こ、こわくなんかっ!、っぁ!。」
羞恥に頬を染めて言い返そうとするが、窓を射す稲妻と鳴り響く雷鳴に思わず仁王に抱きついてしまう柳生。
「よしよし、恐いんじゃな。」
しがみつく体をなだめるように抱き締め背中をさすってやりながら仁王はにやりと笑う。
「に、仁王くん。」
至近距離に近付いた相手の視線と企むような笑顔にびくんと肩を震わせた柳生はあわてて離れようとするが、ギュッと抱き締められ困惑する。
「オレが居るけぇ、恐くないじゃろ?。」
「っ……ぁの!仁王くんっ!。」
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