小説部屋

□雨
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「これを使ってください。」
柳生が差し出したのは綺麗にたたまれた傘。
「雨に濡れて風邪をひくといけませんからね。」
まるで母親のような台詞に、仁王は苦笑する。朝の醜態を見られている以上、柳生の申し出を断るわけにはいかなかった。
「すまん、借りとく。」
「はい。」       仁王が傘を受け取ると、ホッとしたように柳生は微笑した。
それじゃあと二人は互いに背を向ける。
仁王は雨の中に。
柳生は渡り廊下に。

何でもない日常。
ある、雨の日の出来事。
END
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