小説部屋

□††† ANGELA †††
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貴方は天使

私は悪魔

始めから触れる事すら叶わない。





「仁王くん、食事ですよ?。」
やさしく自分を呼ぶ声にソファーに寝そべったまま、
「あ゙〜。」
とだらしなく返事を返す。
燭台の蝋燭が揺れ、石の壁に影が踊る。
食卓には血の滴るような生焼けの分厚い肉と柔らかく白いパンとグラスにはワイン。
赤いワイン。
「今日の糧に感謝します。」
厳かに繰り返される祈りの言葉。
作法を強いられるこの時間を仁王は苦手にしていたが、テーブルを供にする相手の声や優雅な仕草は気に入っていた。特に彼の唇が血のような葡萄酒に濡れる様は自分の本能を心地よく揺さ振るので好きだった。
「仁王くん、テーブルに肘をつかないでください。」
神経質そうな指がパンをちぎり、鳶色の瞳が仁王をせめる。
「レストランでもあるまいし、堅いこと言いなさんなって。」        生焼けの肉を口に入れながらいつものように返事をすると、ちぎったパンを咀嚼する彼はため息と共に眉根をよせる。

いつもの食卓。
かわらない毎日。
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