頂き物

□想い人はただ一人
1ページ/7ページ

【想い人はただ1人】



「勘太郎ー開けろよー」

とある日の午後。
珍しく執筆中だった勘太郎は窓からの呼びかけに反応し筆を止め、窓を開けた。

「あれ…スギノ様?」
「おう」
「どうしたのー?今日何か約束してたっけ?」

とりあえず部屋の中へ促して、窓を閉めた。

「いや。ただ、今日鬼喰いもヨーコも居ないっていうから様子見に来たんだ。」

相手の返答に、勘太郎は嬉しそうに微笑んだ。

以前から、勘太郎とスギノは恋仲になっていた。
勿論、春華やヨーコには何を言われるか分かったものじゃないのでまだ報告は出
来ないでいるのだが。

だからこうして、2人だけになる機会を窺っている。

「お茶淹れてくるから、少しだけ待ってて?」

勘太郎の付き合う前とちっとも変わらない気遣いに、スギノも笑みを浮かべた。

「俺も行く。」
「…俺も行くって、すぐそこだよ?」

クスクス笑いながら言ってはみるものの、スギノはそれを知ってて言っているの
だから、一緒に行く気満々なんだろう。

「ほら、行くぞー」

恋人の家にも関わらず、そのまま恋人の手を掴んでスタスタと台所へ向かう。

「ここボクの家なのになぁー」

スギノの後ろでポツリと漏らしたが、その表情は幸せそうだ。

「いいだろ別に…少しでも一緒に居たいんだよ、お前と、さ。」

愛しい恋人からの嬉しい言葉に、「うん、ボクもだよ」と答えた。










次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ