頂き物
□想い人はただ一人
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【想い人はただ1人】
「勘太郎ー開けろよー」
とある日の午後。
珍しく執筆中だった勘太郎は窓からの呼びかけに反応し筆を止め、窓を開けた。
「あれ…スギノ様?」
「おう」
「どうしたのー?今日何か約束してたっけ?」
とりあえず部屋の中へ促して、窓を閉めた。
「いや。ただ、今日鬼喰いもヨーコも居ないっていうから様子見に来たんだ。」
相手の返答に、勘太郎は嬉しそうに微笑んだ。
以前から、勘太郎とスギノは恋仲になっていた。
勿論、春華やヨーコには何を言われるか分かったものじゃないのでまだ報告は出
来ないでいるのだが。
だからこうして、2人だけになる機会を窺っている。
「お茶淹れてくるから、少しだけ待ってて?」
勘太郎の付き合う前とちっとも変わらない気遣いに、スギノも笑みを浮かべた。
「俺も行く。」
「…俺も行くって、すぐそこだよ?」
クスクス笑いながら言ってはみるものの、スギノはそれを知ってて言っているの
だから、一緒に行く気満々なんだろう。
「ほら、行くぞー」
恋人の家にも関わらず、そのまま恋人の手を掴んでスタスタと台所へ向かう。
「ここボクの家なのになぁー」
スギノの後ろでポツリと漏らしたが、その表情は幸せそうだ。
「いいだろ別に…少しでも一緒に居たいんだよ、お前と、さ。」
愛しい恋人からの嬉しい言葉に、「うん、ボクもだよ」と答えた。