頂き物

□退治師〜海の栗Ver〜
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「なぁ・・・不易。声がさ・・・聞こえるんだ」
「声?」
「うん。こことは違う場所。微かだけど聞こえる。同じ感じがする」
「魂・・・がか?」
「多分・・・魂が・・・・呼び合ってるんだ」
「そうか・・・なら行ってみるか?その声のする方へ、三志」
「ああ・・・」

月明かりさえない、闇夜の中。
二つの声が交わる。
一つは大人の。
もう一つは子どもの。
そして声が聞こえなくなるのとほぼ同時に、姿さえもその場から消えていた。


ここは私たちの知る世界とは異なる、昔と今が交わる世界。
神社など神にすがり称え、妖怪の存在を信じ恐れる不可思議さと、法に守られ縛られ、警察などの組織図が存在する現実的さ、それらが共存する世界。
それでも私たちの世界と変わらない部分もあった。
表と裏。
光と闇。
白と黒。
対なるもの、されど紙一重な関係。
日常と、そこに隠された非日常。
その両方を覗けるものはほんの一部。
それを受け止め耐えられる者と、己が意思とは関係なく生まれ持っての性を持つ者。
そしてこの町にも、そんな存在が多数暮らしていた。
そして新たに二人、そこに足を踏み入れようとしている者たちがいた。

「ここか?」

主に黒系統の衣服に身をまとい、銀の長い髪を揺らす女性。
大胆にVに開かれた胸元。
そこから見える身体のラインがはっきりと出るアンダーが大人の色気を感じさせる。
頭から足先まで黒系の中、瞳と腰紐の赤、耳元に揺れる金のピアスは存在を主張する。
まるで、連れとの繋がりを表すように。

「うん。この町にいる」

赤い着物の子ども。
胸元からは下に来た黒のアンダーが見えている。
頭からは薄い桜色の布を被っている。
まるで顔を隠すように。
その被り布と前髪の合間から覗くのは金色の瞳。
まだ幼さの残る軟らかそうな表情も見える。

「探すのか?」
「・・・今は・・・様子を見るよ」

女性の名は「不易」
子どもの名は「三志」
流浪の者達。
一箇所に留まる事無く、気まぐれにその日を暮らす。
されど、今回は別。
この町にいるであろう「誰か」に会う為に来たのだ。
三志の魂と呼び合う「誰か」に。

「まぁこの町は霊的な力もその他諸々も強いからな」
「妖怪もいっぱいいそうだなv」
「嬉しそうだな」
「だって俺、妖怪好きだもん」
「この町は・・・どうだろうな」
「うん。どうだろうね」
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