逆門2

□一ヶ月企画。
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休憩に入って、暫く立って。
最初はぎこちなくすごしていた新入社員たちも大分馴れてきたらしい。
気の合う同僚や先輩を見つけては、話しかけている。

そこへ、部長が軽く手を叩いた。

「さぁ皆、そろそろ仕事を始めようじゃないか」


Act.3 仕事中。


その言葉に頷いて、社員達はそれぞれ自分の担当する仕事に取り掛かる。
そんな中、珈琲を飲み終えた三志郎が席を立った。

「それじゃぁオレ、外回りに行って来るな」
「はい、行ってらっしゃい、三志郎君」

声を掛けられて、黒は笑顔で三志郎に返事を返す。
そして、フ、と何かに気付いたらしい。おもむろに手を伸ばした。

「あぁ、ネクタイが曲がっていますよ」
「あ、サンキュー黒」

キュッとしっかりと整えられて、三志郎は照れたように笑う。
そして、鞄を持って一言声をかけた。

「それじゃぁ部長、行って来ます!」
「あぁ」
「待ってください先輩!」

後ろから付いてくるかがりに付いて来るように告げて、二人は会社を出た。

「さて…こちらも始めましょうか…三枝君、でしたね?」
「あ、はいっ!」

キィ、と椅子を引いて、黒はロンドンに笑いかける。
それは、とても裏の無い笑顔とは言い難い笑み。

「私の指導は厳しいですよ?しっかり、付いて着てくださいね?」
「はいっ!」

キッパリと、その言葉にロンドンは答えた。
望む所だ、と言わんばかりに。





「あの、多聞先輩!これからどちらに行かれるのですか?」
「…あのさぁ」
「はい?」

ぴったりと半歩下がった場所を付いて歩くかがりに三志郎はくるりと向き直る。
そして、短く溜め息を付いた。

付いてこられるのが嫌なのではない。
声を掛けられるのが嫌なわけでもない。
ただ。

「その『多聞先輩』っての止めてくれねぇか?」
「何故ですか?」

キョトン、とした目で尋ねてくるかがりに、三志郎は『あー』とか『うー』とか、言葉にならない声を出しながら、気まずそうに口を開く。

「どっち呼ばれてるか分からなくなるんだよ…」

黒も『多聞』だから。と、三志郎は苦く笑って呟いた。

そんな三志郎に、かがりは笑顔で頷く。

「分かりました!『三志郎先輩!』」
「先輩も要らないんだけどなぁ…」

三志郎はもう一度、苦笑いを零した。




「あの…多聞先輩?」
「…なんですか?三枝君。ちなみに『多聞』では三志郎君と被るので『黒』で結構ですよ」

カタカタとキーボードを叩きつつ、声をかけて来たロンドンに尋ねる。
その言葉にロンドンは短く頷いてから、要件を告げた。

「何をしてるのか、さっぱり分からないんですけど…」
「敬語も特に必要ありません、と、言うか」

そこで漸く手を止めて、黒はロンドンの方へ向き直る。

「あなたは一体何を見ていたんですか?」
「黒先輩の手の動きと画面の移り変わりだが…」

その言葉に、やれやれ、といった風に黒は大きな溜め息を付いた。

「それならどうして今している事が分からないんですか?」
これくらい、研修でやる範囲でしょう。

そう呟かれた言葉に、思わずロンドンは声を上げる。

「画面いくつも開いて全部いっぺんにやるような早業、僕には理解出来ないんだよ!!」
付いて来いと言うほうが無理だ!!

叫ぶロンドンに、『しょうがないですねぇ…』と呟く黒以外が、大きく頷いていた。




「凄いです三志郎先輩!」
「これからはかがりも一緒に回ってもらうからな!きちんと見て盗んで行けよ?」
「はい!」

楽しそうに話しながら室内に足を踏み入れる二人。
どうやら、外回りも後輩とのコミュニケーションも上手く行ったようだ。

「只今戻りましたー」
「うむ、ご苦労だったな、二人とも」

少し早いが、昼休みにして良いぞ。

「「はいっ!!」」

その言葉に、二人は頷いた。
三志郎が席に戻る頃、書類を片手に黒が部長の席へやってくる。

「部長、こちらも終わりました」
「チェックをお願いします」

その言葉に頷いて、書類に軽く目を通すと、部長は小さく頷いて口を開いた。

「うむ、二人も昼休みにしてくれ」
「「分かりました」」

部長の言葉に頷いて、黒は三志郎の席へと近づいてゆく。

「それでは三志郎君、お昼でも食べに行きましょうか?」
「おう!」

ニコニコと笑顔で頷いて、三志郎は席を立った。

「黒、何食べる?」
「そうですねぇ…」

他愛のない会話をしながら、二人は退室して行く。
それを見て、ほかの社員も早めの昼休みを確保すべく、己の仕事に取り掛かるのだった。




外回りをさせれば部署、いや、社内一の業績を誇る、三志郎。
パソコン業務をやらせれば、矢張りこちらも社内一の業績を誇る黒。
そんな最強夫婦がいるこの部署は、いつだって全社員のやる気に満ち溢れています。

それもこれも、全ては一つの目的の為。
そう。

黒よりも早く仕事を終わらせて三志郎と共に食事に行く為に!!

今日も、部は安泰です。

End.

後書

長い…かな?
黒と三志郎、あまり絡んでませんねぇ…(苦笑)
次は昼休み!不壊さん出すぞー!(笑)

それでは、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです♪


オマケ


ロ「まさか三志郎が結婚してたとはなぁ…」
黒「…手ぇ出したら承知しませんよ?」
ロ「………分かってるよ。三志郎に嫌われたら暫く立ち直れそうに無いしな…」
黒「あなた、まさか…」
ロ「言っとくけど、僕はアンタよりずっと前から三志郎を見てたんだからな。…ま、無いとは思うけど、泣かせたら容赦しないぜ?」
黒「勿論です。でも…三志郎君のことはあきらめてください」
ロ「……それは、無理、だな」(ボソッ)

_ _ _ _ 

「って感じでどうかしら!」
「きゃーーvv良いかも良いかも!幼馴染Vs旦那の奥さん争奪戦ですね!」
「今年も会社が楽しそうだわぁ…」
「先輩!その素敵なお話に私たちも混ぜてください!!」
「「一目見たその瞬間から三志郎先輩は『受け』だと思ってたんです!!」」



相変わらず泉の中では一部腐女子のお姉さん方が…(笑)

…まぁ、今回の三志郎君女の子ですが!
正直そんな設定何処にも活かせそうにありませんけどね!!(え)

2008/04/26


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