逆門2

□ソフトパニック!
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それは、ずっと、ずぅっと昔のお話。
一人の少年が、ある少女に、恋を、した。


一つの恋が全ての始まり。〜ソフトパニック前話〜


少年と少女はいつでも一緒に居た。
一緒に遊んで、笑いあって。

幼いながらに、互いが互いに恋心を抱き始めるのは、きっと、ある意味当然の摂理。

されど、それは叶う筈のない恋。

なぜならば、彼女はこの家を守るモノ。
座敷童なのだから。

座敷童は、名を「べに」と云う。
少年が、紅(くれない)の似合う彼女に、つけた名前。
べにも、少年に恋をしていた。

姿は子どもとはいえ、何百年も、何千年も生きている彼女だ。
彼と恋に落ちることがどういうことか、と云う事くらい、承知している。
彼女は座敷童なのだ。
如何あがいたとしても、大人になってしまった彼の目に、自分が映ることはない。


だから。

彼女は小さく願掛けをした。


彼が大人になっても自分を見つけられるなら。
それでも自分を好いてくれるのなら。

違いすぎる寿命の差に苦しんでもいい。

彼に、この思いを伝えよう、と。




十数年後。

彼は、立派に成人した。
その目は、幼い頃と同じく、真っ直ぐにべにを見つめている。

「べに、俺…お前のことが…」
「私もですよ」

ふわりと笑んで、べには告げた。
好きだと、一緒に居て欲しいと。


こうして、本来ならば相容れることのないはずだった妖と人の婚礼が、本人達だけでこっそりと行われた。

生まれた子どもは、成長し、また恋に落ちる。
…遺伝とでも言うのだろうか。
どれだけ代が続いても、必ず一代に一人、子どもが恋に落ちたのは妖だった。

こうして、少しづつ、妖の血は濃くなり、子どもは長生きになっていく。





「…と、言う訳だ。黒、心配しなくてもオレは長生きするよ。母ちゃんが…200くらいまで生きたしな」

だから酒飲ませてくれ。

そういって笑う三志郎に黒はにっこりと微笑む。

「それは安心しました…が、それとこれとは話は別です」
「黒のケチ」
「ケチで結構ですよ、三志郎君」

過労で倒れたのに長生きするといわれても説得力ありません。

キッパリと言い切った黒に、三志郎は小さく呻った。
諦めたのか、三志郎は話を変える。

と、言っても先ほどの昔話の続きのようなものだったが。

「そう云えば…あいつが気付いてるのかどうかは知らねぇけど…オレを嫌ってる割には…貰った嫁さんは妖だったな」
「…そう、なんですか?」

驚いたように黒は目を丸くする。
三志郎の言う「あいつ」と言うのは彼の息子のことだ。
三志郎を気味の悪いものでも見るような目を見ていた彼が、妖と結婚していたとは…黒には信じられない。

「血は争えないなって思ったぜ」

カラカラと笑う三志郎に黒は「そうですね」と穏やかに呟く。

「な、ばぁちゃんもそう思うだろ?」

不意に目線を横にずらす三志郎に、黒は同じ方向へと目を動かす。

そこには。

「ふふっ。そうね、やっぱり…あの人の血はずぅっと先まで続いていくのね」

ニコニコと微笑む、紅の着物に身を包んだ、幼い少女。

黒は思う。

「三志郎君が対妖用の術に中途半端にかかった理由ってもしかして…」

と。

根拠など何処にもない。
真実を知るものも、誰もいない。


でもそれで良いじゃないですか。
生きて、今を過しているんですから。

ね?

End.



ソフパニ番外編です。
最終回に行きたかったんですが、唐突にこんな話が思いうかんだので(笑)
三志郎の娘、息子、先祖。名前をつけるか否かで悩みました(え)
娘はつけるなら「芙美」とか「深夜」とかがいいです(聞いてない)
あ、「夜実」とかでもいいかな…

ちなみに、泉はネーミングセンス皆無です(笑)

途中まで「今回三志郎たち出番無しかしら?」とか思っていただけましたら作戦成功です(笑)

それでは、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです♪


2008/09/19

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