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□願い
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泉の出て行った部室の中でただひたすらと後悔していた。
「あー、嫌われたかな‥」
いや、もともと嫌われていたかなと苦笑した。
真っ赤な顔と濡れた瞳。
あぁ、なんて綺麗なんだろうと思った。
「‥‥泉‥」
彼女を呼ぶ声は静まり返った部室の中で微かに、しかしはっきり響いた。
なんで気付かないの?
こんなに、ずっと昔から君だけを想っていたのに。
それは自業自得だ。
彼女への行き場のない欲望を他の女にぶつけていた弱い自分の責任。
でも悔しかった。
彼女になんの躊躇いもなく想いを伝えることが出来る奴らが、羨ましかった。
だって俺には、微かな関係を壊す勇気がなかったから。
結局、自ら壊してしまったんだけど。
「‥好き、だったよ‥‥」
伝えるべき彼女はいないのに、ポロリと流れ出た言葉があまりに哀しかった。
ただひたすら、彼女への愛の言葉を繰り返した。
彼女のスカーフを握りしめ、ただ想うは貴女だけのこと。
ねぇ、好きになってとは言わない。だからせめてこの気持ちに気付いて下さい。
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