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□古い傷痕
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降り出しそうな空が

貴方の瞳に映るとき

凛とした横顔と

俺より大きな背中に

言葉はきっと

空回りしてしまうから

俺にできることは

ただ貴方に寄り添うだけ




■古い傷跡






今にも雨が降りそう、そんな天気。
浜田の漕ぐチャリの後ろに乗って色の薄い髪が揺れるのを見ていた。

こういう天気は嫌いだ。嫌なこと思い出すから。


「泉、明日の練習午後からだろ?」
「んー」
「うち、寄ってく?」
「‥‥うち帰るのめんどいから泊めて。」


うちの親は放任主義というか、『また浜田くんのうちね。』って感じで、多分薄々俺らの関係に気付いてるのかもしれない。


「飯なににしょっか」
「‥‥今日、俺が夕飯作るよ」


キキーっと大袈裟なくらい大きな音をたてて急ブレーキ。


「ってぇ‥、なにやってんだよ!」
「マジで!?」
「はぁ?」


振り向いた浜田の顔はキラキラしてた。


「泉の手料理作ってくれんの!?」
「別に、嫌ならいいけど」
「嫌じゃねーよ!めっちゃ嬉しい!」


こんな単純なことでここまで喜ぶ浜田を見たらこっちも嬉しくなる。

数年前、腕を壊した頃の面影もない。

良かったって心から思う。



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