厚さ5ミリの特注レンズ

□厚さDミリの特注レンズ
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さて、勢い良く家を飛び出したロゼッタですが、実はお間抜け札使いキャシオ城は家から近くてあらなんかあっという間についちゃったご苦労様でしたなんて都合の良いことがある筈もなく、なんと家の前には両手に銃を持ち凄い形相でこちらを睨みつけている女の子が立っておりました。よく見ると着ているスーツの内ポケットが物騒な形に膨れ上がっています。あっとパンツのポケットも。
女の子はロゼッタに向かってこう言い放ちます。銃口は向けられたままです。
「あたしは偉大なるキャシオ様の秘密特殊部隊“アラマーン”の一員エリスだ。キャシオ様にお前を待ち伏せぶっつぶすように言われて来たんだ。」
そんなこと言わなくてもわかりますよエリスちゃん。目が殺し屋かなんかのそれですからね。ていうかその危ない武器しまいましょうね。思いっきり銃刀法違反ですよ。
明らかに自分を殺そうとしている人間を目の前にしてもロゼッタは落ち着いています。
「ああ、何だ、あいつのことだからもっと大掛かりに送り込んでくると思ったんだけどな。ただの弱そうな女の子」
――ばあん!!どきゅん!!ぴしゅん!!
ロゼッタが言い終わらないうちに、エリスと名乗る女の子は容赦なく発砲してきました。ロゼッタの顔をかすめます。
「…っ!?銃か!?そんな危険な物を持っていたとは!!」
ああ、ただ見えていなかっただけみたいですね。おそるべしド近眼。
「ふはははは!!この“さすらいのガンマンエリス”を甘く見てると痛い目にあうぞ!!さあどこからでもかかってこい!!相手してやる!!」
「…待ち伏せしてぶっつぶすんじゃなかったのかよ。しかも全然さすらってないし。」
ロゼッタが最もなツッコミを入れバトルは始まります。
ばあんばあん!!どんどんがしゃん!!ばんぴしゅん!!エリスは両手の銃から絶え間無くロゼッタ目掛けて発砲してきます。ロゼッタはその身軽な身体で弾を次々と避けていきます。エリスは避けられるごとに悔しそうに歯を噛み締めますが、実際ロゼッタは防戦一方です。武器を持たないロゼッタに勝ち目があるようには見えません。 と、暫くすると銃からかちりという音が発せられました。弾切れです。
「しめた!!」
それを見たロゼッタは即座に体勢をたてなおしガンマン少女に向かって突進します。
「うるあああああああ!!」
エリスは動きません。
「うるああああ!!…あ?」
2人の距離はわずか5メートル。そこでエリスは突然両手の銃を左右に放り投げ、2本の腕をロゼッタに向けピンと伸ばしました。何かと思うと今度は袖の中からガチンと音が。
なんとそこには……銃がありました。
気付いた頃にはもう遅い、ロゼッタの顔の真ん前に、銃口が2つ、黒いまんまるを見せていました。

――――バアン!!

銃声が2つ、重なり合って1つになり、周りは森だらけのそこに響き渡りました。
仰向けに倒れるロゼッタ。袖口収納式のその銃を元の位置に戻しながらエリスは踵を返します。
「ふ…。終わったな。………あ…れ……?」
ドサッ。そこでエリスはいきなり膝からガクリと倒れてしまいました。
その後ろでは撃たれた筈のロゼッタが、しりもちをついたような体勢で笑っていました。右手にはエリスがぶん投げた銃、そして左手には…なんとゼリーがありました。銃弾が2発、食い込んでいます。
あらまあ何と言うことでしょう。ロゼッタは自分で作ったゼリーで頭に当たる筈だった銃弾を受け止めたのです。おまけに弾切れでお役に立たない銃に麻酔針を突っ込んで、狙いを寸分も違わずエリスの首筋にぶち込みました。こんな事が出来るなんて、尋常じゃありませんね彼は。本当に。どうやって発射させたんでしょう?
「ふふふ…、どうだ!!“ロゼッタ特製ミラクル超弾力ゼリー”は!!俺が苦労して開発したんだぜ?この凄さよーく覚えておけよ!!」
敢えて触れていませんでしたがさっき突然作り始めたゼリーにはこういう意図があったんですね、成る程。やはり天才は違います。
あ、そうそうロゼッタは本編ではすんごい天才という設定で登場してます。でもこんな性格はしてないです。もっとクールで冷静で仲間思いでメガネです。作者今回かなり遊んじゃってます。そんなつもりでヨロシク!!
「さて…と。何か使えるもんは無いかね?」
ガサゴソ。そういいながら不紳士にも眠っているエリスの服をあさります。
すると全部で6丁の拳銃と1丁のライフルが見つかりました。
ロゼッタはこいつすげーなと思いながら、その中から持ち運びやすそうな拳銃2丁をポケットに突っ込み、ライフルを大きなホルスターごとベルトにさし、
「あー、少しビックリしたけど、儲けた儲けた!!これで怖いもの無しだな。」
鼻歌を歌いながら改めて出発しました。
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