Tales of miracle

□幕間 増大する闇の力
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 深き海の底の更に下、太陽の光も届かぬ海底洞窟の最新部。そこに存在する薄暗い研究室で、エルヴィスは黙々と実験を行っていた。ジールたちを送って壊れた転送装置には目もくれず、左右の手に持った赤と青の宝石を凝視している。
「補充、と」
 エルヴィスはそう言うと、宝石を握りしめた。エルヴィスが手を開くと、宝石は跡形もなく消えていた。その代わり、左右の手の平がそれぞれ淡い青と赤の光を発している。
「………」
 途端に、エルヴィスの視線が虚ろになった。左右の手は力なく下がり、まるで存在感がなくなる。しかしその状態はすぐに治まり、エルヴィスは研究室の入口に視線を向けた。
「いいよ、入って」
 嬉しそうな笑みを浮かべながら、エルヴィスが言った。白衣のポケットに手を両手をつっこみ、見えないようにする。
 すると研究室の扉が開き、数人の人影が現れた。辺りを見渡しながら、エルヴィスの方へと歩み寄ってくる。
「素晴らしい場所ね。見たこともない機械だらけだわ」
 滑るように歩きながら言ったのは、リリスだ。
「……何かいる」
 試験管に入れられたたくさんの生命体を見ながら、ディランが警戒した様子で言った。
「よそ見をするな。あいつだけを見てなよ」
 その2人の前を歩きながら、冷たい声をグリムが発した。まっすぐにエルヴィスだけを見つめ、さらに口を開く。
「やっと見つけたよ、エルヴィス」
「見つかっちゃったね、グリム」
 エルヴィスは楽しそうに笑いながら言った。するとグリムは立ち止まり、リリスとディランも止まらせる。
「ジールがここにいるよね?どこ?」
 急かすような早口で、グリムが尋ねた。するとエルヴィスは少し困ったように肩をすくめ、答えた。
「残念、もういないよ。ついさっき転送装置で送っちゃった」
「なら僕も送ってよ。同じ場所にさ」
「それが無理なんだよ。さっき壊れちゃったから」
 エルヴィスの言葉に、グリムは大きな舌打ちをした。
「せっかくチャンスだったのにさ」
「何をするつもりだったんだい?」
 エルヴィスが尋ねると、グリムは面倒くさそうに答えた。
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