Tales of miracle

□第八章 光の国
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 暖かな風が開け放たれた窓から入り、緩やかに室内を巡る。続いて雀が1羽入り、木製のテーブルの中央に止まる。
「へーいわだねー」
 テーブルに突っ伏したクルトが、小鳥を眺めながら言った。団扇に変化した右手が、ゆっくりと動いてクルトを扇いでいる。
「クルト、ちょっと退いて」
 モップで床を磨いていたアリシアが、クルトの側で言った。クルトはゆっくりと立ち上がり、反対側の椅子に座る。アリシアはクルトが座っていた椅子を退け、そこをモップで撫でるように滑らせた。
「焼き鳥が食べたいなあ…」
 クルトの横に座っているジールが、テーブルの上の雀をぼーっと見ながら呟いた。雀は身の危険を感じたのか、すぐに窓の外へ逃げて行った。
「リエンは無事だろうか…」
 天井に近い所にある棚をはたきで払いながら、リオが言った。髪に埃がかかり、若干灰色がかっている。
「へーーいわだーねーー」
 先程より間延びした声で、クルトがまた言った。全員特に返事を返さないが、それぞれがゆったりとした時間を過ごしている。
 その時、テーブルに置かれた無線機が鳴った。
「来た!!」
 瞬間、全員が無線機に手を伸ばした。見事その無線機を手にしたのは、最も遠くにいたはずのリオだった。
「リエンか!?」
『あ…リオか?俺だ、ラキ…』
「リエンは無事か!?」
 電話の奥で落胆したようなため息が聞こえた後、リエンの泣きそうな声が聞こえてきた。
『リオ!リエンだよ!リエン大丈夫だよ!』
「リエン…無事で良かった…」
 しばらくの間、2人は無事を確かめ合っていた。続いて電話の向こうで少し話し声が聞こえた後、別の声が聞こえる。
『済まないが、ジールに代わってくれ。いるだろ?』
「ああ、今代わる」
 リオがジールに無線機を手渡した。
「ラキー!」
『ジィール!元気そうで安心したぞ!お前に何かあったかと思うと俺はもう心配で食事も喉をどほっ!』
『まず全員の無事を確認し合うっつったろーが!』
「…………」
 やたらとハイテンションなラキの声に続いて鈍い音が、さらにミューラのヒステリックな声が聞こえてきた。ジールが呆れていると、アーネストの声が無線機から聞こえた。
『やあジール。こっちは4人とも無事だよ。そっちは?』
「みんな一緒、大丈夫だよ。誰も怪我してない」
『そうか』
 ジールが朗らかに答えると、アーネストも安心したように言った。
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