Tales of miracle
□プロローグ
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果てしなく続いている青い空、地平線の彼方まで見える黄緑色の草原。
そこに彼はいた。心地よい風が少しクセのある銀色の髪をなびかせ、照り付ける強い日差しは彼のまだ幼さが残る涼しげな顔をしかめさせた。
「ここは…どこ?」
誰に対してでもない問いを口にしてみてもやはり応える者はいなかった。
仕方なく前に進むため、右足を一歩踏み出してみる。すると今まで静かに優しく吹いていた風が突然轟音をあげて彼に真正面からぶつかってきた。
「うわっ!」
あまりにも突然の突風に、彼は思わず目を閉じてバランスを崩さないためにふんばった。すると風はすぐさま元に戻り、再び静かに吹き始めた。
彼は体の力を抜き、目を開けて辺りを見回してみた。そしてその目はある一点を捉えて止まる。
そこには赤い髪をポニーテールにくくり、強い太陽の光を浴びても全く反射しない漆黒のドレスを纏っている女性が、彼に背を向けて立っていた。ざわっと風が吹くと、女性の赤い髪がさらりと揺れる。
その姿に彼は、まるで魔女のようだと感じた。恐怖を感じなかった訳ではないが、彼は女性の方へ歩き出した。なぜかそうしなければならない気がしたからだ。彼が足を踏み出しても、今度は風が吹き荒れる事はなかった。