Tales of miracle

□第二章 シルヴェスタ
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 次の日、ジールが目を覚ますとテントの外から雨の音が聞こえてきた。
「う〜、雨かぁ。ねぇ、起きてよ、ラキ。朝だよ」
「ん、朝か?お、雨が降ってるな」
「ふわぁ〜、アリシアは?」
「隣のテントだろ。もう起きてるかもな」
 ラキが目を擦りながら言うと、外からアリシアの声が聞こえてきた。
「2人とも、起きてる?」
「うん、今起きたとこ」
「中に入ってもいい?」
「え、あ、ちょっと待って。まだ下着姿なんだ」
「そう。じゃあ着替え終わったら教えて」
 そう言ってアリシアはテントから離れた。
「ほんとに起きてたね。ラキ、着替えよう」
「ああ、ほらよ」
 ラキはジールの服をエアーボールから取り出し、投げてやった。
 2人は急いで服を着て、アリシアを呼ぶためにテントから顔を出した。
「うお、すごい雨だな」
「本当だ。って、アリシア外で待ってるよ!アリシア、いいよー」
 激しく降り注ぐ雨の中、アリシアはコートのポケットに手を入れて立っていた。そしてジールの呼び声に気付くと、テントの中へ入ってきた。
「ふぅ、嫌な雨ね」
「それよりアリシア、風邪ひくよ。すぐに体を拭かないと…あれ?濡れてない」
 あの激しい雨の中にいたというのに、アリシアの体には水滴すらついていない。
「ああ、風の層で体を包んで、水を受け流したの。だから心配いらないわ」
「へぇ〜、雨の日も平気なんだ」
「ええ。2人は雨をしのぐ方法はある?」
「ラキ、確かレインコートがあったよね?」
「ああ、あと長靴もあるぞ」
「それなら今日も進むことができるわね」
「次はまっすぐクイール山に行くの?」
「その前にサラワクっていう町を通るわ。その先がクイール山よ」
「じゃあ、ひとまずそのサラワクってとこに向かうんだな」
「ええ。多分、昼頃には着くわ」
「それじゃ、サラワクに向かってレッツゴー!」
「おい、待て待て!」
 掛け声をあげてテントを出ようとしたジールを、ラキが引き止めた。
「そのまま行くつもりかよ?レインコートと長靴忘れてるぞ」
「あ、そうだった」
「ほら、着ろ」
 ジールはラキから雨具を受け取り、着始めた。ラキもそれに続く。
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