Tales of miracle

□第三章 絶望と希望の狭間で
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「おいおい、何事だよ、これは」
「何があったの?」
 急いで着替えて部屋を出たジールとラキ。そこで見たのは静けさに包まれたシルヴェスタ本部ではなく、慌ただしく上へ向かう沢山の人と赤い蛍光灯の光だった。
「ジール、ラキ!」
「あ、アリシアとミューラだ」
 人波の中に紛れて、アリシアとミューラが下から走ってきた。
「ねえ、アリシア。一体何があったの?」
「分からないけど、何か緊急事態が発生したのよ。とにかく、アーネストの所へ行きましょう」
「あ、おい、あれアーネストじゃねえか?ほら、走って降りてくるぜ」
 ミューラが指した方向を見ると、確かにアーネストが走っていた。4人もアーネストの方へ向かう。
 話ができるくらいまで近づくと、すぐにアリシアが話しかけた。
「アーネスト、一体何が起きたの?」
「悪魔が攻めてきた。しかもかなりの数だ」
「なんですって!?」
 アリシアがそう言うと同時に、ドーンという轟音と共に上方から悪魔が現れた。どうやら入り口の扉が破壊されたようだ。
 いち早く最上部に着いた人は悪魔と戦い始め、その規模はどんどん大きくなっていく。アーネストはその様子を見て舌打ちをした。
「ち、奴らもう入ってきた。アリシア、リーダーからの命令だ。今すぐ火炎の谷へ出発する」
「どうして?私も戦うわ!」
「アリシア、命令だ。君は火炎の谷へ向かわなければならない。分かるだろう?」
「く…分かったわ。みんな、行きましょう。下に出口があるから、そこまで走るわよ」
 アリシアとアーネストが下に向かって走りだし、3人もそれに続いた。走りながら、ジールがアリシアに話しかける。
「ねえ、アリシア。どうして戦わないの?」
「命令だからよ」
 アリシアの答えは淡白だった。
「みんな戦ってるよ。おれたちも戦おうよ」
「リーダー命令よ。今すぐ火炎の谷へ出発するわ」
 淡々と答えるアリシアに、ジールは少し怒った口調になる。
「命令だからって逃げるの?それでいいの?」
「いいわけないでしょ!」
 ジールよりも数段強い口調でアリシアは言った。みんな驚いて一瞬止まったが、すぐに走り出す。
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