Tales of miracle

□幕間 蠢く黒い影
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 薄暗い通路を、軽快な足取りで駆け抜けるレヴィ。迷路のように入り組んだアスタルテの本部を、迷うことなく進んで行く。
 しばらくするとレヴィは扉の前で止まり、ノックもせずに中へ入った。中は散らかってはいないが色々なインテリアが多数置いてあり、少し強い柑橘系の香りが充満している。
 レヴィは辺りを見回し、ソファーでヘッドフォンをかけながら雑誌を読んでいる1人の男を見つけて声をかけた。
「ヤッホー、ブレイク。ただいま〜」
「ん?ああ、レヴィか。遅かったな」
 ブレイクと呼ばれた男は雑誌を置くと、ソファーに座ったままレヴィに話しかけた。
 ブレイクは乱れた灰色の髪に黒いサングラスをかけていて、両耳には金のピアスが付けられている。また、白いシャツが見えるように前を開けて来ている濃い灰色の服には、袖の所に金の装飾が施されていた。さらに、左の胸の辺りにある赤い逆十字の紋様と顔にあるペイントが、彼がバーリムである事を示していた。
 レヴィは部屋の中を見渡しながら鼻をひくつかせ、ブレイクの方を向いた。
「んー?何だか部屋の香り変わったね〜。前は花みたいな香りだったのに」
「ああ、前のやつは飽きたから変えた。なかなかいいだろ?」
「うん、いい感じ〜」
「Thank you。で、俺に何か用があったんじゃないのか?」
「あ、そうだった」
 レヴィは素早くブレイクの方へ走り、隣に座った。そしてエアーボールから宝玉を取り出してブレイクに見せた。
「じゃ〜ん!アイスサファイア〜♪」
「おお、宝玉か!よく見つけたな」
「ほんとはもう少し早く見せたかったんだけどぉ、別の任務が入って例の女を尾行してたの」
「例の女、はアリシアか」
 そう言ったブレイクの表情が曇った。レヴィはそれを見逃さない。
「ちょっとブレイク、まだ引きずってんの〜?もう過去の事じゃ〜ん」
「違えよ。俺は捨てた女に興味はない」
「…何か誤解しそうな言い方だけど、逃げられたんでしょ?」
「そっちも誤解されそうな言い方だな。ま、逃げられたのはマジだけどな」
 ブレイクはここでチッと舌打ちし、話を変えた。
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