Tales of miracle

□第六章 サイモン洞窟
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 〔潮騒の町 クレルモン〕は賑やかな町だった。たくさんの人が道を埋め尽くすかのようにひしめき合い、活気に溢れている。道の両脇には高潮対策のためか、高い土台の上に建てられた建造物が並んでいる。
「なんだか塩の匂いがするね。なんだろ、この匂い」
 ジールが鼻をひくつかせながら言った。それを聞いてミューラが驚きながらもおかしそうに答える。
「何って、海の匂いだろうが。ジール、海も見た事ねえのかよ。ほんと、田舎者だな」
「田舎者って言うな!ラキだって初めてだよね?」
 ジールが振り返ってラキに尋ねると、ラキは困ったような笑顔を浮かべた。
「いや、俺は小さい頃に両親に連れて行ってもらった事があるんだ。かなり久々ではあるけど」
「え〜、だったらおれも連れて行ってほしかったな〜」
 ジールがむくれて言うと、アーネストが間に入った。
「まあまあ、いいじゃないか、ジール。今こうして海が見れるんだからさ」
「それに、これから船にも乗るのよ。ジール、楽しみじゃない?」
 アリシアも言うと、ジールは途端に笑顔を見せた。
「そっか、船かぁ。うん、すっごく楽しみ。みんな、行こう!」
 ジールは上機嫌な様子で号令をかけ、歩き出した。が、それと同時にラキがジールの腕を掴んで引き止める。
「待て、ジール。お前が1人で行くと迷子になるから、俺と手を繋げ」
「ええ〜、子供扱いしないでよ、ラキ!手なんか繋がなくてもちゃんと行けるよ!」
「駄目だ。リエンを見てみろ、ちゃんとリオの手を握ってるぞ」
 ジールがリオとリエンの方を見ると、確かに手を繋いでいた。お互いに放さないよう、しっかりと握り合っている。
「リエン、リオと一緒じゃないと、不安だから…」
「私たちの事は気にするな。いつもこうしているから」
「ほら、リオとリエンは手を繋ぎだいから繋いでるんだよ!おれは大丈夫だから!」
 ジールはラキの手を振りほどこうと腕を乱暴に振るが、ラキはジールの腕をしっかり掴んで放さない。
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