Tales of miracle

□幕間 増大する闇の力
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「そろそろ僕たちも動こうと思ってさ。封印術士を拉致して氷の精霊と契約する予定だった」
「氷の宝玉を持っているのかい?」
「あんたなら分かるでしょ」
 エルヴィスの問いに素っ気なく答えると、グリムはエアーボールから宝玉を取り出した。
「ほら、氷の宝玉。あんた何とかできないの?」
「いや、無理だね。宝玉に真の力を持たせるには、宝玉を作った精霊じゃないと。それより…」
 エルヴィスの両眼が、アイスサファイアを捉えた。
「それが宝玉か。込められた魔力の量もさることながら、なんて汚れのない氷の魔力なんだ。素晴らしい!」
 話している内に、エルヴィスの声が熱を帯びてきた。眼は見開かれ、喜びに体が震えている。
 その様子を見て、グリムはさっと宝玉をしまった。
「何興奮してんの?目が危ないよ」
「おっと、ごめんよ」
 エルヴィスはそう言うと、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。しかしグリムは訝しげな視線をエルヴィスに向ける。
「今、目がマジだったよ。この宝玉、あんたにとってそんなに特別な物なの?」
 グリムは声を低くさせ、脅すように尋ねた。しかしエルヴィスは全く動揺する様子を見せず、飄々とふるまう。
「いやー、科学者としての好奇心を擽られただけさ。なんせ、宝玉なんて初めて見たからね」
「ふーん…」
 あからさまに納得していない返事をして、グリムは黙った。エルヴィスは慌てて話を変える。
「そうそう、グリムにプレゼントがあるんだ。今の君に足りないもの」
「あ、そう」
 まるで興味ない様子の返事をしたグリムに、エルヴィスはニヤリと笑いかける。
「封印術士、欲しいだろう?」
「何?」
 エルヴィスの言葉に、グリムは顕著な反応を示した。エルヴィスは満足そうに微笑むと、指をパチンと鳴らした。
「おいで、メリル」
 エルヴィスの声に反応して、ある試験管の中にいる人が呼気を発した。ぶくりと気泡が浮かび、水面で弾ける。
 すると急に試験管が脱水を始めた。全て排水し終わるとパイプが外れ、中にいた人が吐き出される。
「ん…」
 濡れた体が地面に落ち、倒れこんだ。エルヴィスはすぐさま近づき、支えて立たせる。
「大丈夫かい、メリル?」
「へ、いき…」
 囁くような声でそう答えたメリル。エルヴィスはポケットから手を出し、白衣をかけてやった。
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