Tales of miracle

□第八章 光の国
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 するとクルトがジールの肩に体重を乗せつつ、無線機に向かって口を開いた。
「アーたんたちはどこに飛ばされたの?」
『シャックス大陸北の海岸線さ。3人は砂浜に出現したんだが、1人だけ海に落ちてしまってね…』
『はーっくしょん!』
 ラキの大きなくしゃみが聞こえた。クルトは可笑しそうに笑う。
「ラッキン、ついてないね。悪霊でも憑いてるんじゃない?」
『『縁起でもないこと言うな!』』
 無線機の奥で、ラキとミューラが同時に言った。それにクルトが声を出して笑っていると、アリシアが無線機に近づいた。
「私たちは今、ジールたちの家にいるの。ネム大陸の西よ」
『そうか、遠いね。合流できるのは大分先になりそうだ』
 アーネストが困ったように言った。続いてリオが、冷静な様子で口を開く。
「まずはお互いに大陸を渡る方法を探そう。私たちが渡ればシャックス大陸で、そっちが渡れればネム大陸で合流すればいい」
『…そうだね。では、大陸を渡る方法が見つかり次第また連絡をするよ。みんな、異存はないね?』
 アーネストが無線機の向こうから問いかけた。ジールたち4人も無線機の向こう側も、誰一人反対の意を示さない。
『決まりだな。それじゃ、ここから別行動だ』
『また全員揃って再開しよう』
『ジール、ちゃんとみんなの言うこときくんだぞ』
『リオ、リエン頑張るからね』
 ミューラたちの声が、無線機から4人へ伝わる。ジールたちはそれぞれ笑みを浮かべ、口々に無線機へ話しかける。
「おれ、ラキたちと会えるのを楽しみにしてるからね」
「無事を祈っているわ」
「リエンをよろしく頼む」
「お土産もよろしくね〜」
 全員の声が向こうへ届くと、無線機を切った。ジールは無線機をエアーボールにしまい、皆の方を向く。
「じゃあ、シャックス大陸に行く方法を…」
「シッ」
 ジールの声を、クルトが口に人差し指を当てながら制した。3人がクルトの方を向くと同時に、玄関の扉をノックする音が聞こえた。
「誰?」
 ジールが扉の奥にいる人物に向かって尋ねた。すると間を置かずに、男性の声が返ってきた。
「旅の者です。少し水を分けて欲しいっす」
「いいですよ。今開けますね」
 ジールが立ち上がり、玄関に向かった。
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