Tales of miracle

□第一章 動き出した運命
2ページ/40ページ


 その時、突然何処からか甲高い笑い声がしてきた。
「キキキキキ、見ツケタゾ!」
「誰っ!?」
 ジールとラキは驚いて周りを見回してみたが、声をあげそうな物はどこにもない。2人が警戒して背中合わせになると、再び甲高い声が聞こえてきた。
「キキ、上ダ!」
 その声で2人は同時に上を見た。すると木々の間から黄色い物体がジールとラキを目がけて一直線に急降下しているのが目に入った。
「ジール、避けろ!」
「わかってる!」
 ジールとラキはそれぞれ反対方向に飛び込んで避け、受け身をとって立ち上がった。
 黄色い物体は地面にぶつかる直前に90度向きをかえてさらに5m程進み、こちらを向いて空中で停止した。
 それは全長1m弱で顔は白く、それ以外はどこも黄色一色だった。また、頭部に2本の触覚と1本の長い尻尾、背中には2枚の薄い翼がついていてとても人間には見えない。実際違うのだろう、こんな人間はありえない。
 ジールとラキは今まで全く見たことのないその姿に言葉を失っていた。すると黄色い生き物が鳥のようにとがった口をにやりと曲げ、ジールとラキに話しかけてきた。
「オマエラ、抗体ヲ持ッテイルナ。先天性カ、ソレトモワクチンヲ使ッタノカ。マァ、ソンナコト今ハドウデモイイケドナ」
 突然現れた謎の生き物に訳の分からない事を言われて、ジールとラキは混乱していた。それでも少しずつ冷静さを取り戻し、黄色い生き物に話しかける。
「これ、何?」
 ジールが先に口を開いた。
「コレナンテ言ウナヨ。オレハ【インプ】ッテ名前ノ悪魔ナンダゼ」
「インプ?悪魔?全然意味わかんねぇ。なんで悪魔なんかこの世にいるんだ?」
 今度はラキが問いかける。
「キキ、知ラネエノカオマエラ。オレハオマエラミタイナ人間ヲ殺スタメニ来タンダヨ」
 インプは狂喜の笑みを浮かべ、更に続ける。
「前ニ1度悪魔ノウィルスヲアチコチニ送リコンデヨォ、人間ヲ大量虐殺シテヤッタンダヨ。アレハ見テテスゲー傑作ダッタノニ、魔王サマガナゼカ禁止ニシチャッタカラコウシテワザワザ殺シニキタノサ。オレハ人間ヲ直ニ殺スノモ好キダカラ別ニイイケド。キキキキキ!」
 インプは言い終わると空中で腹を抱えて笑い出した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ