Tales of miracle

□第三章 絶望と希望の狭間で
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「でも…命令なのよ…」
 アリシアが悔しそうに付け足した。見ると、噛み締めた唇から血が流れている。
 ジールはうつ向いてそれ以上は何も言わなかった。
「!みんな、止まれ」
 先頭を走っていたアーネストが突然皆を制止した。4人は慌てて止まる。
 と、同時に上から1本の細い銀製の杭が降って来てアーネストの目の前に突き刺さった。もしアーネストが止まらなければ、誰かが串刺しになっていただろう。
「うお、危ない。何だ、これは?」
「恐らく敵の仕業だろうが、気にしている暇は無い。とにかく走るんだ」
 ラキの質問にアーネストは簡潔に答え、杭の横を通って再び走り出した。他の4人もすぐに続く。
 しばらくして広い円形のホールになっている最下層にたどり着いた。
「アーネスト、次はどこに行くの?」
「あそこの扉から外に出られる。急げ!」
 アーネストが指し示した扉は入り口のそれと同じくらいの大きさで、横にパスワードを入力する機械もついている。
 5人は一直線にその扉へと向かうが、扉の少し手前で先程の杭が3本落ちてきて扉の前に突き刺さり、行く手を遮られた。
 5人が急停止すると同時に、突然背後から神秘的な声が響いてきた。
『地の底より出でし命を吸い取る暗き闇。ダークシェイド!』
 声が終わると、5人の足元から黒い煙のような物が吹き出してきた。黒い煙はどんどん量を増し、それぞれの体に纏わりついてくる。
「うわ、何これ?気持ち悪いよ」
「ぐ、何だか力が抜けてきた」
「あ、あたしもだ。くそ、振り切れねえ」
「これは、闇魔法?くっ、油断したわ」
 4人が黒い煙に苦戦していると、今度はアーネストの声が響く。
『降り注げ、聖なる光の結晶体。ホーリーレイン!』
 アーネストが片手を挙げると、上空から光り輝く結晶が大量に降ってきた。結晶は5人の周りに落ちて砕け散ると、黒い煙を取り込み始め、やがて煙と共に消えていった。
「あら、なかなかやるじゃない。驚いたわ」
 いつの間にかホールの中央にいた女性が、妖しさを含んだ高い声でそう言った。5人は警戒しながら女性の方を向く。
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