Tales of miracle
□第五章 風の都と混血
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ジールが光線が放たれた方向を見ると、ちょうどミューラと目があった。
「わりい、ジール。つか、何とかしてくれ」
「えー、無理だよ。この人形速いから、そんな余裕ない」
「ちっ、近づけねえ」
ミューラが再び光線を避けるのに必死になると、ラキがガルキマセラに矢を放った。しかしガルキマセラは光線を放ちながら、空中でひらりと矢をかわす。
その時、アリシアとアーネストの詠唱が完了した。2人の声が重なり、辺りに響き渡る。
『荒ぶる真空の渦にて引き裂かん』
『眩き光は一点に導かれ、今ここに集結し、放たれん』
『サイクロンブラスト!』
『セイントビーム!』
アリシアの杖から竜巻が、アーネストの鉄球から光線が放たれ、それぞれキラードールとガルキマセラに襲いかかった。キラードールはバラバラに引き裂かれ、ガルキマセラは光線を受けて蒸発するように消えていった。
残る悪魔はキラードール1体だけだ。
「よっし、あと1匹。あたしに任せな!」
「なら、おれも!」
ミューラのすぐ後にジールも走り出し、キラードールもナイフを振り回しながら跳びかかる。
「へん、そんなもんであたしを倒せるかってんだ」
ミューラはナイフを容易く叩き落とし、そのままキラードールを後ろへ受け流した。そこへすかさずジールの斬撃が振り降ろされる。
「やっ!」
ザン、という音と共にキラードールは真っ二つになり、地に落ちて消滅した。
「よっしゃ、勝ったぜ!」
「やったね、ミューラ!」
パン、と2人はお互いの手を叩いた。そこへ他の3人も走り寄る。
「ふう、今回はけっこう苦戦したな」
「悪魔の動きが活発になっているね。というより、自由に暴れ回っている、と言った方が正しいかな」
「魔王がいなくなって統制が失われたのかしら」
ラキ、アーネスト、アリシアの順にそう言うと、ジールが全員に呼びかけた。
「みんな、早く行こうよ。ミトラはすぐそこだよ」
「ええ、そうね。行きましょう」
アリシアの号令で5人は再び歩き出し、ミトラへと入って行った。
その時日は沈みかけ、辺りは夕闇に包まれていた。