Tales of miracle

□第六章 サイモン洞窟
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 それを見て、アーネストがため息混じりに言った。
「ならばこうしよう。ジールを中心に僕たち6人が円になって歩く。そうすれば迷子にならないし、ジールも子供扱いされているようには見えない」
「まあ、それならいいか。ジール、みんなから離れるなよ」
「大丈夫だよ」
 ラキがジールの腕を放すと、ジールはすぐに6人の側に寄った。そのまま7人は固まって歩き出し、港を目指す。
 しかし、その途中で正面からやってきた男が声をかけてきた。
「あ、お前ら」
「え?あー、レイファン!」
 レイファンだった。どうやら1人らしく、杖も持っていない。身構えたジールたちに対しても、落ち着いた口調で話しかけた。
「おいおい、こんな街中で殺気たてるなよ。俺は勝ち目のない戦いをする気はない。お前らだって一般人を巻き込みたくないだろ?」
「…ハインはどこだ?」
 リオが警戒を解かずに尋ねると、レイファンは困ったように肩をすくめた。
「こっちが訊きたいぜ。ハインのやつ、武器買うとか言ってどっか行っちまった。俺の財布持ってな」
「………」
 7人は黙ってレイファンを観察していたが、レイファンに敵意はないので警戒を解いた。すると、ミューラが1歩前に出て少し威圧的な口調で言った。
「じゃ、そこどいてもらおうか。あたしたちは港に用があるんだ」
「どいてもいいが、1つだけ条件がある」
 ミューラの言葉に、レイファンは真剣な口調で返した。それにアーネストが鋭く先を促す。
「なんだい?」
「ハインを見つけたら伝えてほしい。自分の武器ぐらい自分で買えと」
「…それだけ?」
 予想外の条件にリエンがきょとんとして尋ねると、レイファンはうんざりしたようにため息を吐いた。
「俺にとっては死活問題なんだ。前の剣も無理やり買わされたっていうのに、これ以上使われたらたまったもんじゃない」
「苦労してるんだな…」
 ラキが共感したように言うと、レイファンはラキに向かって頷いた。
「まあな。それじゃ、よろしく頼むぜ。またな」
 レイファンはそう言って7人の横を通り、人混みの中へと消えていった。
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