Tales of miracle

□第六章 サイモン洞窟
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 それを確認すると、ミューラが口を開いた。
「ハインもこの町にいるみてえだな。どうする?」
「出来たら暗殺、それが無理なら平和的にやりすごそう」
 アーネストが平然と答えると、リオがそれに続いた。
「暗殺か。こう人が多いと、それも難しいな」
「そうそう、僕を暗殺するなんて無理無理」
「うわっ!ハイン、いつの間に?」
 突然ジールの隣に現れたハインに、ジールが驚きながら尋ねた。するとハインは楽しそうな笑顔を浮かべ、答えた。
「驚いた?ジールたちが歩いてるのが見えたからさ、ちょっとからかってやろうと思ったんだ〜」
「何のようだ?」
 ハインの軽い調子とは対照的に、リオが鋭い口調で尋ねた。するとハインは笑顔のままリオの方を向き、両手を差し出す。
「剣、返して」
「断る」
「…そんな即答されたら殺して奪うしかないじゃん」
 ハインの笑顔にやや陰りが見え、あからさまな敵意をリオに向けた。しかしリオは涼しい顔でそれを流す。
「7対1、しかも武器もないのに戦う気か?」
「あらら、冷静に返されちゃったよ。まあね、戦う気は全然ないよ。これから新品の剣を買いに行かなきゃならないしね〜」
 そう言ってハインが取り出したのは、焦げ茶色の大人びた財布だ。明らかにレイファンのだろう。
「ハイン、レイファンが自分の武器くらい自分で買えって言ってたぞ」
「あ、会ったの?でも大丈夫!買ってしまえばこっちのものだからね」
 ラキの言葉にもハインは軽い調子で返し、さらにそのまま喋り続けた。
「レイファンもさ、あー見えてけっこう間抜けなんだよねー。この間もレイファンの杖隠してみたら必死こいて探してるの。もーその姿がめっちゃ面白くてさ〜」
「あっ」
 ジールがハインの背後を見て声をあげたが、ハインは気づかずに話し続ける。
「あとこの前はうたた寝してるレイファンの寝顔に落書きしてやったの!そしたらそのまま大事な会議に行っちゃって、もう腹がよじれるくらい笑ったね〜!」
「あの…」
 リエンが控えめに話しかけるが、ハインの耳には届いていないようだ。
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