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□その意味は…
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『最近藍将軍は女遊びをしていないらしい。』
絳攸はここの所よく聞くようになった噂に首を傾げた。
国試及第以来の腐れ縁である楸瑛のことは、他の誰よりも知っているつもりの絳攸には俄かに信じられない内容だった。
なぜなら少し前までの楸瑛は、妓楼へ通い詰めていたのだから。
王の執務室へ向かいながら歩いていても、さまざまな所でその話をしている官吏や女官がいた。
「絳攸」
かけられた声に後ろを振り返ると、そこには噂の張本人である楸瑛が居た。
「やっと見つけた。また迷っていたのかい?」
近くまでやって来ての楸瑛の第一声はこれだった。
迷っていたと認めたくない絳攸は、
「まっ迷ってなどいない!!ちょっと散歩をしようかと思っていただけだ」
そう返す。
そんな絳攸に楸瑛はクスリと笑うと、
「散歩は満喫したようだし、主上もお待ちだろうから行こうか?」
と言い、もと来た道を歩き始めた。
絳攸もそれに続き歩き出す。