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□月満ちて
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楸瑛サイド
((あぁ、満月か…。こうして月を見上げるのも久しぶりなものだな。))
楸瑛は自室の窓からふと月を見上げた。
雲ひとつない空は幾千もの星が輝き、更に月を綺麗に見せていた。
「今頃、どこにいるんだろうね。私の愛しい弟は…」
ぽつりと零れる呟きも、だんだんと冷たくなってきた空に吸い込まれていく。
誰にも、ましてかの人になど絶対に届かないと分かっていても想い、言葉となって溢れてしまうのはそれほどまでに愛してしまったから――
禁断の恋であることは楸瑛も重々承知のこと。
進んでしまったこの道を今さら戻ることなどできはしないし、しようとも考えていない。
((全く、君はどこまで私を堕とせば気が済むのかな…?私を堕とすだけ堕とし消えてしまうのだろうか――))
満ちた月を見て想うは愛しい愛しいただ1人のことだけ。
想い人も同じ月を見ていることを願い今日さらに楸瑛は深く囚われていく――
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