CP小説

□苺がいつもより甘くなる時
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小さい頃、バージルの持っている玩具が欲しくて駄々をこねると、なんだかんだで譲ってくれた。憎まれ口を叩いても、やはり、一応兄であるのだと思う。

粗末なキッチンで夕飯の準備をする細身な後ろ姿。俺と同じ顔なのに、俺より親父に似ている奴が料理なんて、と最初は気分が悪かった。いっそ母親に似ていてくれれば、なんて。

「なー、飯まだかよ」

「煩い」

「腹と背中がくっつくー」

腹の虫が鳴いた。
心底腹立たしそうに片手間に振り返ったバージルが、厳しい眼でこちらを睨む。怖い怖い。

「そんなことがあってたまるか。文句を垂れるなら、」

「手伝うか?」

手伝う気なんてさらさらないが、提案してみる。答えはノー、決まっている。
前に酷く怒られて仕方なく手伝ったら、逆に仕事が増えた。俺に料理は向いてない。人には得意不得意がある(怒りを通り越して呆れるバージルといったら!)。
顔が背けられた。微かに舌打ちが耳に入る。

「なー、バージル」

「もう黙れ。貴様と話していると苛々する」

ひっでえな、と笑う。
俺は楽しい、そう言えばきっと鬼の形相でキレる。言わないが。

「デザートはストロベリーサンデーがいいよなあ」

「作る訳ないだろう」

「頼むって、オニイチャン。可愛い弟のお願いだぜ?」

「気色悪いぞ、愚弟」

本格的に機嫌を損ねる前に口を閉じる。美味そうな匂いがしてきた。
運ぶくらいなら、そう思ってソファから立ち上がる。狭いスペースに並ぶ皿をテーブルに移し、片付けがあるから先に食えという言葉に従う。

「ああ、美味い」

「当然だ」

自信たっぷりな声に苦笑いながら、遠慮なく食べる。どうせバージルはあまり食べないし、俺が食わなきゃ残る。
水の流れる音が止んで、バージルが正面に座った。

「これで我慢しろ」

「は?」

なんのことだと思えば、目の前にはミルクがたっぷりとかかった苺。丁寧にヘタをとってある。

「不服は言わせん」

言わねえよ。
ああ、不意討ちだ。嬉しくて、ついにやける。

「ありがとよ、オニイチャン」

「…殴るぞ」



































***
仲良し双子。
バージルはダンテには甘いんだ、結局。そうであれ。










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