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□たった少し、生まれる順番が違っただけなのに
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この愚弟は…!
「行儀が悪い」
怒鳴りたいのを抑え、言った。
ストロベリーなんとかだの、ピザだのハンバーグだのオムライスだの(中略)、食べたいと連呼するものだから作ってやれば。
俺の分の食事がよそわれた皿に伸びるフォークが止まる。ダンテが誤魔化すように気の抜けた笑みを向けてきた。
「自分のを食え」
「もう食っちまったよ」
綺麗に平らげた後の皿を指で示す。珍しく野菜も残していなかった。
「…ほら」
一口食べただけのハンバーグを皿ごと押しやる。ぱっと明るくなる表情に心底呆れた。
もともと少食というか、コイツと違い食い意地がある訳でもないから、くれてやったところで問題はない。空になった皿を流しに片付け、ほぼ二皿めになる夕飯を頬張る弟を眺めた。
「まったく、貴様という奴は…」
溜め息が洩れた。
するとダンテは口の中のものを飲み込んでから、少し不貞腐れたように唇を結んだ。
「仕様がねえだろ。アンタが食ってんのの方が、なんか美味そうに見えたんだ」
餓鬼か。
ほんの数分や数秒遅れて生まれただけなのに、何故こうも幼いのだ。
頭を抱えるが、喉まで出かかった不満は呑み込まれた。
「なあ、バージル」
無邪気すぎる顔。
自分と造りは変わらない筈だ。しかし、どうにも適わないものがある気がする。屈辱だ。
「美味かったぜ。なんていうかな」
「…なんだ」
「ん、おふくろの味ってやつ?」
それは褒めているのか。
仮にそうだとしても俺はコイツの兄であり、ましてや男だ。一緒に暮らすようになり恐ろしいほどの不摂生に耐え兼ね料理を始めたが、母親と同じ味を作るとは。
ありえん。断じて。
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