ボス愛!
□予兆、突然の予約
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「アンタいっつも仏頂面なー。疲れないか?」
微笑をひとつ。
至極不機嫌そうな紅い眼が左から右、詰まり窓際から俺へと移された。
「誰が入室を許可した」
「ん?金髪の奴に訊いたらイイっつわれたからさ、」
ベルか、と溜め息混じりに呟かれた名前。
あぁ、彼奴ベルっつーのな、とぼんやり記憶。
確か十年前のボンゴレリング争奪戦の折に獄寺と闘った相手だというのは覚えていたけど、名前までは知らなかったと思う。
「ま、今は敵じゃねーんだし勘弁」
「…は、」
「?」
「テメェは、何時もヘラヘラしてて疲れねぇのか」
肩をすくめた。
ヘラヘラしてる自覚なんてない。
この楽観的な性格は親父譲りなのだ。
「疲れねぇけど?」
また更に自分の表情が緩むのを感じた。
どうしようもない。
それ以上会話は続かず、何となく気不味くて空いている手で口許を覆った。
「これ、ツナから」
持っていた資料を机の端に置く。
じゃ、と方向転換しようとしたら、ふいにネクタイを引かれてバランスを崩した。
「っ!」
ヤバイ、と。
アレ?
何だ、と。
「わ、悪ィ」
慌てて下がったけど、力が入らなくてそのまま毛足の長い絨毯にへたり込んだ。
バランスを崩した次の瞬間、間違いなく唇が触れた。
そんなベタな。
「ぶはっ」
と、吹き出すような笑いに我に返る。
「何に謝ってンだ、テメェは」
「え、その…はは」
誤魔化すように笑ってみたものの、明らかにXANXUSの方が余裕。
どうしてこういう時に限って上手く笑えないんだ俺!
「礼儀もだが、ソッチの勉強もしとくんだな」
「ソッチ…」
反芻しながらどう切り返すか考えてみる。
そうすぐに思い付けずに紅い眼を眺めていると、XANXUSが椅子を離れて廊下に続く扉に手を掛けた。
「俺は出掛ける。テメェもさっさと消えろ」
「なぁ」
「あ?」
立ち上がる。
「アンタが教えてくれよ、ソッチの勉強」
片眉がつい、と上がり訝しむように双眸が細められた。
すぐにそれは妖艶な笑みに変わる(思わず見惚れたのは言わずにいよう)。
「テメェ次第だ」
(それ、承諾の返事として受け取ってもイイのか?)
(やべ、マジで嵌りそ)