ゆめ
□似合わない
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半魔なんて、そんな素敵な。
私はそう思い、素直にそう言ったが綺麗すぎる彼はいかんせん不服そうに眉を潜めた。
なあに、恐がればよかったの?
「おかしな女だ」
「おかしなひと」
べ、と舌を出す。アイスブルーの瞳がふいと反らされ、長い指が口元を覆った。震えている。
「え、バージル、わら…笑って?笑ってるの?」
返事はない。ただ小刻みに肩が揺れた。伏せた視線を追って下から覗き込むと、目尻に涙がたまっていた。
な、なんか可愛い。ちくしょう。
「なんで、どうして笑うの!」
机をバシバシ叩いて拗ねてみる。双子だというのに、ダンテと違ってわかりにくい。
「いや、あまりにも」
「あまりにも?」
「幼稚、というか、な」
反論しようとして、しかし、口をつぐむ。私の目の前には甘い甘いパフェ。バージルの前にはコーヒー、無論ブラック。
食の好みで大人だ子供だ判断するのはおかしいとは思うが、今はそれを抜きにしても説得力がない気がした。
「あの、バージル。半魔とか」
「都合が悪くなると話を逸らす」
「っ!」
唇が柔らかい弧を描く。
反則だ。綺麗。本当に、同じ世界にいる生き物じゃないみたい。
愚痴はしまった。カフェでゆったり過ごしている時に、急に半魔とか暴露するのは突飛だと突っ込んでやりたかったのに。
「もう…会計、バージルがもってよね」
嫌味のつもりで伝票を押し付ける。が、彼は不思議そうに私を眺めた。
「元よりそのつもりだ」
割り勘も、奢られる気もない、と。
バージルが割り勘なんて口にすると凄い違和感があって、今度は私が笑い出す。
不機嫌に「何を笑っている」とたしなめられてしまったが、それでも止まらない。
「バージルが、ふふ…!」
「俺が、なんだ。おい、チョコクリームを拭け」
「チョコクリーム!」
またツボにはまる。
ああ、似合わないなあ。
(そんな日常がいとおしい)