ゆめ

□空を穿つ、
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「DevilMayCry」

ショッキングピンクで縁取られた文字のネオンが宵闇に光る。やや廃れた建物、その両開きの扉を引き開ける男が一人。
夜風に揺れる見事な銀髪、澄んだ淡い水色の瞳、端整な面立ち、均整のとれた肢体。黒のスーツの下には、派手な赤いシャツ。堅気の人間には見えない。
扉の先は、空と同様に闇で覆われていた。男はほっとしたように息を吐き、静かに室内へと足を踏み入れた。
途端に、照明が灯る。

「随分と遅い帰宅だな、ダンテ」

冷ややかな声に、男、ダンテはぎくりとして身体を強ばらせた。彼の視線の先には、彼と瓜二つな容姿があった。双子の兄、バージルだ。
違うのは、きっちりと着こなされたスーツの下の青いシャツとネクタイ、オールバックに纏められた髪くらいだろう。

「バージル…いや、あのな」

上ずりながら、適当な言い訳を考える。しかし、バージルは無言でダンテに歩み寄ると襟首を掴む。

「貴様が遊び歩いている間、俺が何をしていたか分かるか」

「し、仕事…?」

「そう、仕事だ。しかも貴様が先の依頼遂行中に壊した公共物から馬鹿高い私物の請求書処理を中心にな」

言い切ると同時に、ダンテは宙に放り投げられた。バランスをとり着地すると、目の前には山のように書類が積み上げられた事務机がある。
後退るが、バージルの眉間に皺が刻まれたのを目にして渋々と椅子に掛ける。どう考えても終わりが見えない量だが、兄のデスクの上にはその二倍以上が乗っている。おそらく片付けたものだ。

「俺は寝る。終わらなかったら食事も酒も、給料もないものだと思え」

「冗談キツいぜ…」

バージルの場合、冗談じゃ済まない。
階段をのぼり、ドアが軋み閉じる音が聞こえた。手近な紙切れを一枚とり、背もたれに体重を任せる。景気付けにジュークボックスを鳴らそうとして、止めた。鬼の形相の兄が戻り兼ねない。
大きな溜め息を溢し、ダンテは万年筆を握った。







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