主人公独白(捏造話) 今も昔も軍部は嫌いだ。身を置いているのが不思議なくらい、俺は軍を嫌悪している。 自ら望んで軍人になったと言う紛れもない事実にも拘らず、両親が軍人だったと言う変えようのない過去にも拘らず、きっとそれは変わらない。一生変わることはないだろう。 出来ることなら軍人など辞めてしまいたい。だが辞められないことなど自分自身が一番よく分かっている。そこには根拠の無い確信があった。 あれは忘れもしない1年半前の内戦、俺は初めて隊を指揮した。公にはされなかった国境付近の小さな紛争。証拠は隠滅され、正式な記録は探しても残っていないかもしれない。暫くしてその村は災害で滅んだと報道されていたように思う。しかし俺の記憶の中では今でもあの時の光景が鮮明に再生される。 上からの達しは標的の村を殲滅せよとのことだった。国境に面するその村は、アメストリスよりも隣国に対して友好的だった。それを軍は恐れたのだろう。 当時の俺に逆らう術はない。率いてきた同朋を躊躇い無くその村に侵攻させた。そして、その地域の住人は一人残らず殺された。 いや、違うな。俺が殺したんだ。 命令を下したのは間違いなくこの俺だ。俺が上の命令を拒めないのと同様に、部下達も俺の言葉には逆らえない。俺が犯したのは自らの手を汚さず行う殺人行為。その事実は変わらない。 作戦の途中、目の前で罪の無い人間が息絶えていくのを見た。 罪の無い人間を殺した部下が泣き崩れていくのも見た。 罪悪感に苛まれて正気を失う者も居たが、今となってはそれが正常なのではないかとすら思う。平然と日常を送っている俺こそ、狂っているのではないかと。だがそんなことを気に病んでいてはこの仕事は勤まらない。唯一殺人が無罪になり得る場、それが戦争。そう割り切るしかないのだ。 結果としてその内戦で俺は証拠一つ残さず殱滅を成功させた。完璧な作戦は完璧に遂行された訳だ。この事実は一般に報道されることもなく軍部の最高機密の一つとなり、俺を始めとする部隊の者達は大総統から個人的にではあるが賞賛された。 勿論俺の株も一気に上がり、そうして今では若くして中将にまで上り詰めた軍人として国中に名を馳せている。これで良かったと思っている。後悔もしていない。だが、喜びは皆無だ。 やはり、俺は軍が嫌いらしい。一生嫌いなままかも知れない。 だがそんな事より何より、軍部にしか身を置くことの出来ない自分自身に一番嫌気がさす。俺には軍人でいるという選択肢しかないのだ。 果たしてこんな俺に、罪人を咎める権利なんてあるのだろうか… よく考えずに書き始めたので、酷い設定の話になってしまいました。 |