次男総受け

□次男からまた手紙が届いた
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 松野家の六つ子は呪われている。

 誰が言ったか、ここ最近そのような噂がまことしやかに流れている。火の無い所に煙は立たぬと言うだけあって、噂が流れた明確な理由はあった。トド松、十四松、一松が立て続けに怪我をしたのだ。

 初めはトド松だった。彼は左足を骨折する大怪我をした。工事現場の前で木材が倒れてきて下敷きになったらしい。
 次の十四松は左腕を骨折した。歩道橋の階段から転落したのだと言う。
 そして先日、一松が頭部を負傷した。ベランダから植木鉢が落下してきて、一松に直撃してしまったようだ。


 怯えながらトド松は言った。バイトの帰り道の途中、白い布を被った男を見かけ、理由は分からないが引き寄せられるように普段は通らない道に入ったらしい。ふっとその人物が消えたかと思うと、木材が倒れてきて足を挟まれてしまったのだと言う。

 困惑しながら十四松は言った。歩道橋の階段を降りようとした時、何者かに背中を押されたのだと。一瞬だけ見えたその姿は、美しい金色の髪をした男だったと十四松は主張したが、事故の目撃者達は誰一人そのような人物は見ていないと言う。

 焦燥しながら一松は言った。歩いていると目の前に突然人が現れた。その綺麗な碧眼は鋭い眼光で自分を見据えてきて、兄弟の縁を切れと呟いた。訳も分からず立ち竦んでいると、突然頭部に強い衝撃を受け、そのまま意識を失ったのだと言う。


 次は自分の番なのかと恐怖しているチョロ松とは対照的に、おそ松は何故だか冷静だった。根拠はないが、弟達が見たのは同じ男なのだと言う確信がある。

 まさに今日届いた、一つ下の弟からの遠回しな決別の手紙は、次男らしくない文体だった。そんな弟からの手紙をくしゃりと握り締めながら、おそ松は静かに決意した。

 カラ松は決して渡さない、と。


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