Prologue 二人で見に行ったあの海の美しさ。俺は一生、忘れはしないだろう。 ――なあ、おそ松。海を、見てみたいんだ。青は俺の色だからな。 そう言ったカラ松は、弟の顔をしていた。 青はカラ松の色。それは俺達五人が当たり前に持っている共通認識だった。 一体それはいつ伝えたんだったか。覚えていないが無意識に伝えていたのだろう。 優しいあいつは、突然与えられた自分の色に戸惑いながらも、深く考えずに納得したに違いない。そして、それと同時に俺達のことも受け入れてくれた。俺達兄弟を無条件に受容してくれるカラ松には、海のような青色が良く似合う。 だから、そんなカラ松が海を見たいと言うのなら、どんなことよりも優先してやりたいと思った。 いや、それだけじゃない。元々海なんか取り立てて好きでなかった俺まで、カラ松が想いを馳せる大海原をどうしても見たくなった。 それからはあっという間だった。他の四人の大切な弟さえも家に残し、ついに海に囲まれた小さな離島へと二人だけでやって来た。兄弟から鬼のように電話がかかってきたが、全部無視だ。 あの煌めく水面の青さは、今も俺の目に焼き付いて離れない。 突然海へ行くぞと言った俺を驚いた顔で見ていたカラ松も、いざ海を前にすると何故だか懐かしそうな優しい表情をしていたのが印象的だった。 なぁカラ松。これからも海なんて何度でも連れて来てやるから。 だから、せめて。ずっと俺の弟でいて。それ以上は、望まないから。 |