次男総受け

□次男から手紙届いた
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「ニート達ー! 手紙が届いてるわよ!」

 ニートの俺達に手紙って誰からだろ。松代から渡された手紙を開くと、それは弟のカラ松からであった。このご時世に手紙って、あいつらしい。釣り堀でも魚に愛をしたためた手紙を餌にしていたとトド松が言っていたな。カラ松はロマンチストだから、メールよりも手紙派なんだろう。

 俺がカラ松からだと呟くと、チョロ松が何と書いてあるのかと聞きながら便箋を覗いてきた。珍しい。非常に珍しい。どういう風の吹き回しだ。いつもなら、カラ松からの手紙だと聞けば、絶対に全員どうでもいいと切り捨てるはずなのに。かくいう俺も、中身を読まずに捨てていたかもしれない。でも何故か今日は読もうという気になったんだ。チョロ松につられたのか、トド松や十四松も傍に寄って来た。一松はいつも通り興味なさげにしているが、しっかりこちらの話に耳を傾けている。
 つまり、みんなそれだけ暇だったってことだ。あのカラ松の、何て書いてあるか半分も分からないだろう手紙の内容を気にするくらい、俺達は暇だったんだ。という訳で、早速俺は封筒を開封した。

「じゃあ読み上げるよー。翻訳は各自でな」

『久し振りだなブラザー。俺が居なくて寂しい思いをさせていることだろう。すまないな』

 思ってねぇよ微塵も。あれ、そう言えばカラ松の奴をここ一か月くらい見てない。みんなもそれに気付いたのか、「あ……」って顔をしている。まあ成人男性がしばらく家を空けても別に気にしないよな普通。うん、一か月くらい普通普通。現にこうして手紙が来るんだから、無事だった訳だし。細かいことは気にすんな。

『最近やっと落ち着いてきたので、今までのことを話そうと思って筆を執った次第だ。1か月前、俺は黒服の男達に突如として異空間へと連れ去られた。』

 何、また誘拐? あいつよく誘拐されるよね。あのお人好しの弟は、もう少し人を疑うと言うことを知り、危機感を持った方が良い。

『そこはまさに戦場。生きるか死ぬか、鎬を削る戦いの中、俺は今の仲間達と出会うことになった。彼らは自分達が不利な状況であることを知りつつも、敵に刃を向け、果敢にも立ち向かっていた。空蝉を守るために自らの命を懸けて日夜戦っているその姿に俺は感動した。自らを犠牲にしてまで戦うなんて、誰にでもできることじゃない。』

 待て待て、何だか話が飛び過ぎじゃね? 何で急に戦うとかそういう話になってるんだ? 俺達は全員で顔を見合わせて疑問符を浮かべた。これもカラ松がいつも発揮している痛い比喩なのだろうか。何を表しているのか考えてみても、やはりいつもと同じく何が言いたいのか分からない。とりあえず続きを読んでみるか。

『カタストロフィを無に帰し世界の崩壊を防ぐため、俺も人知れず戦地へ赴くことにした。俺よりも幼い姿の戦士達もいるのに、俺だけがのうのうと守られてる訳にはいかないからな。世界平和のため、俺は今日も蛇矛を手に取り、立ちはだかる漆黒の堕天使達をカタルシスへと誘っている。』

「駄目だ、余計分からん。あいつ結局何が言いたいの? 誰か分かる奴いる?」
「世界平和? 相変わらずイッタイよねぇ」

 誰もカラ松の言葉を翻訳できなかった。まあ分かってたけど。トド松がげんなりした顔でいつものように痛いと貶している。

『という訳で、俺は審神者として生きることにした。』

 だから話飛び過ぎだろ! 何が、という訳で、なの? 審神者って何!? お前は一体どこで何をやってるの!?  結局肝心なこと何も分かんなかったんだけど!

『P.S. 三食昼寝付きの割に給料がとてもいいので、良かったらブラザーも一緒に審神者をやりませんか?』

「だから審神者って何!? あいつ何と戦ってるの!?」

 チョロ松のツッコミに、みんなうんうんと頷きながら冷や汗を流している。戦うって? ふざけんな。あいつは自分を基準に考えてるから分かってないだろうけど、俺達普通の一般人だからね? え、カラ松? あいつは一般人(仮)なんだよ……。とりあえず言わせて。

「よく分かんねぇけど、俺達とんでもないことに巻き込まれそうな予感……!!」


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