ホラー・狂愛夢

□にんじん大好き
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 英二君は8歳の小学3年生です。英二君は好き嫌いの少ない良い子でしたが、にんじんだけはどうしても食べられませんでした。本当に大嫌いで、食べたら吐いてしまう程です。

 しかし、ある時そのせいでクラスの友達に変なレッテルを貼られてしまい、泣きながら家に帰って来ました。
そして神様にお願いします。

「神様、どうかにんじんが食べられるようにしてください! お願いします!」

 毎日毎日何度もお願いしました。それでもにんじんは食べられるようになりません。

 明くる日、家に帰って食卓を見ると、なんとにんじんばかり並べてありました。英二君は「おれがにんじん嫌いなの知ってるのに、こんなに出すなんてひどい!」と思い、お母さんの菜月さんに文句を言います。

「お母さん! にんじんなんて食べれないよぉ!」

 しかし、それを聞いた菜月さんは不思議そうな顔をしてこう返しました。

「あら、何言ってるの? 今日は英二の大好きなハンバーグよ?」

 ハンバーグ? 変だな、どう見てもにんじんなのに……。
 そう思いながらも勇気を出して少しだけ食べてみました。するとどうでしょう、本当にハンバーグの味がします。嬉しくなった英二君はハンバーグ味のにんじんを残さず綺麗に食べました。

 次の日、またにんじんがお皿の上に乗っていました。食べてみたらカレーライスの味がしました。
 更に次の日、にんじんを食べたら変わった味がしました。食べたことのない味です。すると菜月さんが嬉しそうに言いました。

「英二、にんじん食べれたじゃない! 偉いわよ!」

 英二君はよく分かりませんでしたが、お母さんに褒められたことで嬉しくなりました。そして、それから毎日にんじんを食べました。色々な味のにんじんを食べることは、今や英二君にとっての楽しみの一つです。




 それからしばらくしたある夜、にんじんが本を読んでいました。目をぱちくりさせた英二君は、疲れているんだ、早く寝よう、そう思ってそのまま眠りに就きました。

 その翌朝、目覚めると目の前に大きなにんじんが立っています。寝ぼけていた英二君はすっかり大好物になっていたにんじんを見て、驚くより先に齧りつきました。

「変わった味だにゃー? こんなにんじん初めて。でも……結構おいしいかも!」

 少し柔らかいそのにんじんは今まで食べたことのないような味ですが、なかなか美味しくて夢中になってしまいました。
 もう少し食べたいな、と思ってむしゃむしゃ食べていた英二君ですが、お母さんの作った朝食を食べないといけないことに気付き、にんじんをそのままにして1階に降りていきました。

「よぉーっし! 今日もいっぱいにんじん食べるぞー!」

 少し寝ぼけながらも元気いっぱいで1階へ降りて行くと、食卓でにんじんが新聞を読んでいました。まだ夢を見ているのかと首を傾げた英二君がその場で突っ立っていると、にんじんが少し動き、なんと言葉を発したのです。

「おはよう、英二」

 その言葉を聞いた途端、にんじんの姿がぼやけ、いつものように新聞を読んでいるお父さんの姿に変わりました。

「え……?」



 2階には身体中を食い千切られ、眼球や内臓を引きずり出されて変わり果てた姿の菜月さんが血を噴き出しながら横たわっていました。



元ネタは少女漫画。少女漫画ですよ。


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