ホラー・狂愛夢

□入浴中
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「ど、どうしよう……」

 現在、私こと菜月はかなり困っています。それもこれも原因はあの男、クラスメイトの千石清純のせいです。

 何が“清純”なの! 性格捻くれてるじゃない! あー……どうしようかなぁ……。困ったなぁ……。

 事の発端は10分前でした。突然鳴りだした携帯の相手は、先程言った千石君です。

「やっほー、菜月ちゃん! 今何してるぅ?」
「何って、今からお風呂に入ろうとしてた所だけど、何か用?」
「そっかそっかぁ! 間に合って良かった!」

 用事だと思って話を聞くと、頭を洗っている時に「だるまさんがころんだ」と言うな、なんて訳の分からない事を言い出した。しかも、考えるのも絶対ダメらしい。

 理由を聞けば、前屈みで目を閉じて頭を洗っている姿が、だるまさんがころんだをしているように見えるから、だそうだ。全く意味が分からない。

「菜月ちゃん知ってる? 家の中でも水場って霊が集まりやすいんだって。だから、だるまさんがころんだって考えると……取り憑かれちゃうらしいよ?」
「……」
「じゃあ、気を付けてね菜月ちゃん! 入る前に知れて良かったね! 菜月ちゃんラッキーだよ! それじゃあまた明日ー!」

 言いたいことだけ言って勝手に切られました。絶対わざとだ。今頃笑っているに違いない。もう……どうすんのよ……怖くてお風呂入れないじゃない……! 恨んでやる千石清純!



 さて、洗髪中に一度ならず何度も「だるまさんがころんだ」を脳内で反芻してしまった貴女。気が付きましたか?

 青白い顔の女が、背後から肩越しに貴女の横顔を血走った目でじっと見つめている事に……

 今から入浴するのであれば、「だるまさんがころんだ」を考えてはいけませんよ? 何度も言いますが、決して「だるまさんがころんだ」だけは考えないで下さいね。



もし今から入浴予定の方が居たら、私の思う壺です。


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