これは俺がまだ錬金術も碌に使えないようなガキだった時の話だ。 その日母さんは少し遠くまで買い物に出掛けていて、俺とアルが二人で留守番をしていた。二人で暇を持て余していたら、丁度良い所に幼馴染のウィンリィと刹也が遊びに誘いに来たんだ。しかし、留守番中の俺達は、勝手に外へは出られなかった。そのため二人を中に招き、俺達の家でかくれんぼをすることにした訳だ。 じゃんけんの結果、刹也がオニになり、かくれんぼが始まった。 「ウィンリィみっけ!」 「あー、みつかっちゃった!」 かくれんぼを初めて数分後、少し離れた所から刹也とウィンリィの声が聞こえた。どうやらウィンリィが最初に見付かったらしい。 「アルみーつけたっ!」 それから暫くして遠くからアルが見つかった声もした。 「うわぁ! ぜったいみつからないとおもったのにー!」 「あとはエドだけよ!」 最後まで残った俺は一人で声を立てないように笑いながら、見付からないようにそのまま身を潜めていた。 3人が次第に俺の隠れている近くにやって来る。俺がそろそろ見つかるかなと思っていると、案の定刹也の声が聞こえてきた。 「……あ! エドみっけ!」 声が聞こえ出ていこうかとしたが、自分に向けて言っている言葉にしては声の方向が違う気がして違和感を覚えた。それに、扉を開けないと見えないように隠れていた俺は、子供ながらに、もしかして鎌をかけているのか、なんて疑って暫く声を出さずにじっとしていた。 「はやくでてこいよー、つぎのオニはウィンリィなんだから!」 何かがおかしい。そう感じた俺は仕方なく棚の扉を開けて外に出てみた。すると三人ともタンスの方を見ている。そして、刹也はタンスに手を突っ込んで何かを引っ張っているようだった。 「なぁ、なにしてんだ?」 俺が声を出すと同時に三人が勢い良く振り返った。 「え……っ!?」 訳が分からずきょとんとしていると、こちらを振り返った次の瞬間には三人同時に再びタンスを向き直り、甲高い声で悲鳴を上げた。 「うわあぁぁぁ!!」 それと同時に刹也が凄い勢いでタンスの中に突っ込んでいた腕を大きく振り払って絶叫しながら逃げ出した。それに続くように二人も泣きながら走り去ってしまった。何が何だか分からない俺も、とりあえず後を追って外へ出た。 一人だけ訳の分からなかった俺は、家の外で泣いている刹也を見つけて話を聞いた。 何でも、タンスに手を入れてみたら誰かに腕を掴まれたので、俺だと思って引っ張ったそうだ。だが、俺が全く違う所から出てきたものだからパニックを起こしたらしい。 あの時刹也を掴んだ手が泥棒のものだったのか、それとも……。その時の俺は間違いなく幽霊の存在を信じていた。しかし、今の俺は科学者だ。非科学的な事は信じるつもりはない。 ただ、間違いなく言える事実は、母さんが出て行ってからウィンリィ達が来るまで、俺とアルはずっとタンスの置いてある部屋に居たことだ。そして、かくれんぼが始まってからは隠れながらもタンスの周囲を見張っていたが、その付近に全く人影なんてなかった、ということだ。 その後、家の前でアルと母さんが帰るのを待って事情を話し、それを聞いた母さんが憲兵を読んで家の中を調べてもらったが、結局タンスの中どころか家の中には誰もおらず、盗まれた物も何もなかった。 あれは一体何だったんだろうか。 あまり怖くなかったので、いっそのことギャグにしてしまおうかとも思いましたが、一応ホラーにしてみました。 |