「最近休んでる美奈ちゃんって、入院してるらしいね。宍戸同じクラスでしょ? 何で入院したか知ってる?」 「あぁ、何かショックで精神状態が不安定だからって言ってたぜ。あと口も聞けなくなったらしい」 「え……それは大変だね……。でも、一体何があったの?」 理由を聞かれた宍戸は言葉を濁した。言ったら菜月が試しそうだから、と。しかし、そんな理由で好奇心の塊のような菜月が納得するはずもない。菜月がさらに問い詰めると、宍戸は観念したように美奈に何があったのか話し出した。 「あいつな……合わせ鏡をしたんだ」 「合わせ鏡?」 その返答は菜月の疑問を益々大きくしたのみだった。当然の如く詰問が続く。宍戸はなかなか話したがらなかったが、菜月の根気に負けてとうとう事の全容を話し始めた。 「ネットで見たんだけどな、……菜月、マジで試すなよ? 絶対だかんな」 何がそんなに心配なのか、再度念を押す宍戸に菜月は空返事をして、早く早くと続きを促した。 「まず鏡を4枚と蝋燭1本を用意するんだ。その4枚の鏡を真上から見て1辺15cm位の正方形になるように東西南北の位置に立てて置くんだとよ」 「それで?」 「夜中の12時46分から1時13分の27分の間に、部屋の電気を消して、鏡で作った正方形の中心に蝋燭を置く。そうすると、合わせ鏡の中にとんでもなく恐ろしいものが見えるらしい……」 合わせ鏡を試した美奈は、その恐ろしいものを見たに違いないというのだ。菜月がどんな物が見えたのかと問うも、美奈は話せなくなってしまったのだから宍戸も知りようがない。それでも宍戸はかなり恐ろしい物が見えるのだと言う。 「あぁそれと、美奈はもう亡くなってるぜ?」 「え!? な……何で? 本当、なの……?」 まだ中学生の菜月にとって、たとえそれ程交流のなかった人であるとはいえ、同級生の死という事実は耐えがたい恐怖と悲哀を誘った。 「よっぽど怖かったのか……死ぬ間際に自分の両目を抉り出して、一言『見なければ良かった』って言って死んだらしい」 こっそり合わせ鏡を試そうと考えていた菜月は、その壮絶を絶する状況に恐れをなし、瞬時に身震いをして絶対にやらないようにしようと思い直した。しかし、そこでふと気がつく。 「あ、れ……美奈ちゃんが合わせ鏡をやったこと……何で宍戸が知ってるの……?」 「ああ。だって俺が教えたからな。アイツなら面白がってやると思って。でもどんな物が見えるのか聴けなくて意味なかったな」 「そん、な……」 「あ、菜月は試すなよ? お前が入院したらやだし。……次は長太郎にでも試させるか」 みんな大好き爽やか宍戸さんはどこー? 何という外道…。気分を悪くされた方、申し訳ありません。 |