刻まれた証

□04.てるてる坊主にかかってるよ
1ページ/1ページ



てるてる坊主にかかってるよ


 俺とユーキは時々似ていると言われた。
 自分ではあまりそう思わないが、アルや大佐まで真面目な顔をしてそう言うのだから、あながち嘘ではなかったのだろう。

 今になって思えば、確かに俺達には共通点も多かった。探してみれば色々あるが、目で見て判ることと言えば機械鎧を装着していたことだろう。

 最先端技術で作られた機械鎧は、値も張る上に手術にかなりの苦痛を伴う。しかし、その分普通の義肢より圧倒的に自由に動かせ、まさに第二の手足となって働いてくれる。意思の通りに自由に動かせるのは、手足の切断部の神経と機械鎧の人工神経が繋がれているからだ。

 しかし、人工的に接続された神経は時に不調を訴える。一番分かり易いのは湿気の多い雨の日だろう。天気の悪い日に古傷が痛むのと同じことだと思ってもらえばいい。

 だから、俺は雨の日は嫌いだった。


 だがアイツ……ユーキの左腕が機械鎧だと知り、やはり雨の日には調子が悪いと聞いてからは、俺とアイツだけがこの疼きを共有できるのだと密かに嬉しくも思っていた。

 嫌いだった雨の日も少しは好きになれた。


 ユーキの亡き後、雨とともに訪れる右肩と左足の痛みはアイツを思い出させ、哀しみと懐かしさを誘うだろう。いつかは哀しみなしにお前を懐かしむことができるようになるのかもしれないが、今はまだできそうにない。

 また少し、雨が嫌いになってしまった。


 今日、お前がいなくなってから初めて雨が降った。暗い空から止む気配もなく降りしきる雨は、まるで俺の心のようだ。そして、痛むのはいつもの傷跡と、それからこの胸の奥。

 俺は居てもたってもいられなくなり、子どもの頃のようにてるてる坊主を作り、必死に晴れを祈った。

 この空も俺も、早く泣き止んでくれるようにと。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ