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□貴方に・貴女に依存症
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このまま雨が止みませんように…
このまま時間止まりますように…
【貴方に・貴女に依存症】
どのくらい時間が経ったのかな…
寝ちゃったみたい。
日向が体を動かすと、温かい感触。
ぼんやり目を開くと、小さな焚き火の照り返しを受けて赤く見える紫の髪が、すぐ鼻先にあった。
「!!?」
「……起きたのか?」
彼がぽつりと呟いて、紫の瞳を上げる。
「完全に足止めだ。雨足が強まるばかりで、出られない」
「え、あ、うん、そう…だね」
切れの悪い返事をして、日向は立ち上がる。
咲夜は特にどうといった反応を示さずに、広げていた書物に再び目を戻した。
いつの間にか、彼に寄りかかって眠っていたらしい。
日向は決まり悪そうに、二人が今、緊急避難した小さくて狭い洞窟の入り口に向かって歩き出す。
「あまり外へは出るな。この雨に打たれでもしたら、後々厄介だぞ」
「子どもじゃないんだから、分かってるもん!」
照れくさくて仕方ないもんだから、わざと怒鳴って、日向は駆けだした。
…真っ赤になった顔を見られたくなかったから……。