present novels
□ホシに願いを
1ページ/6ページ
ささの葉サラサラ
のきばに揺れる
ラリ子様相互記念
【ホシに願いを】
夏の夜のこと。
今宵の空晴れ渡り、星がよく見える。
元々街灯は必要最低限しかなく大都市とは無縁の地にあるこの里にとっては、ごく当たり前の風景だ。
夏はこの様に星が美しく瞬き、冬は銀色に輝く月が幻想的な光を放つ。
これは、そんな夏の日の話…
陽が傾きはじめている夕暮れ。
なにやら屋敷はざわついていた。
男達が大きな竹を抱えて戻ってきたのだ。その竹はかなり立派なもので、誰が欲しがったのかを聞かなくても答えは明白だった。
「ぁ、いたー!」
「欲しい」と言った張本人が呑気にやってきた。
ずっと読んでいた書物から少し目を外して彼女を見つめる。
彼女の手には折り紙とはさみがしっかり握られていた。
「サクも一緒に飾り作ろ?ね?」
「遠慮する。そういう柄ではないのでな」
「いいでしょ?ね?ね?」
「却下」
咲夜の興味は、現在日向より本に向いていた。
微妙と思って借りた本だったがこれが以外にも面白く、彼にしては珍しくゆっくり時間を掛けて読んでいた。
あと少しで読み終わるのに、例え日向であっても中断はされたくない。
一つに集中すると回りが見えなくなってしまうのが彼の少しいけないところ。
だが相手は日向。そう簡単に諦めないのが自分の彼女。
案の定「じゃあ読み終わるまで待つ」と言い出してぺたんと隣に座り込んだ。
こうなってしまったら咲夜が日向に適うはずない。
「ね、サク………」
「ッ…………」
そんな目で見つめて
切なそうな声を出して
これじゃあ嫌なんて言えないでわないか…ッ
悔しそうに溜め息を吐いて読みかけの本をパタンと閉じた。
そしてゆっくり腰を上げる。
「あれ……?」
「作るのだろう…?ほら」
すっと手を差し出す。躊躇われたが、すぐにその手を日向は取った。
腕を絡めるという行為は二人にとってよくあることだが「手を繋ぐ」というのはよくよく考えるとあまりない。
恋人なら当たり前の行為だが、二人共それがとても新鮮に感じた。