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□ホシに願いを
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当の二人は真っ赤になって固まっていた。
心臓が嘘の様に早く、落ち着かない。
二人の世界に入ってしまうのは今に始まった事ではないが、他の者に見られるのはやはり羞恥心が込み上げる。
「……行こう?サク」
「あ、ああ」
まだ頬を赤く染めている日向が促す。
促されてやっと立ち上がり仲間達が集まっている竹の方に足を進めた。
皆で作った飾りをささの葉にくくりつけ、全てつけおわったら寝ていた竹を起こして固定する。
見慣れた中庭に突如現れた真っ直ぐ伸びた竹は、圧倒的な存在感を出していた。
皆竹の回りで子供の様にはしゃぎ回っている。
犬は喜び庭駆け回りという歌詞がどこかの歌であったような気がするが、今の彼等はまさしくそれだ。
「みんなのとこ行かないの?」
顔の火照りが引いた日向が聞いてくる。
「あんな馬鹿共と一緒にするな」
すっかり本調子に戻った咲夜が皮肉めいた口調で言う。
それもお見通しだった彼女はクスリと笑い、隣に寄り添う。
空はもう暗くなりかけていて、天の川が見え始めていた。
美しいディープブルーの夜空に星が散りばめられている。
「小さい頃に聞いたの。あの天の川で織姫と彦星が出逢えるんでしょ?もう二人共二人共出逢えたのかな?きっと、幸せなんだろうね」
夜空に浮かぶ星の川を眺めながら日向が言う。
そんな容姿で、仕草で、そんな可愛らしい事を言われて我慢できるはずもなく…
見上げて無防備な彼女にそっと短く口付けを落とした。
「私にとっては、お前が………」
織姫だから―――
その言葉を飲み込み、ただ、彼女を見つめる。
そっと柔らかい頬に触れ、引き寄せ、抱き締める。
自分だけの「織姫」を…
もう一度唇を重ね、抱き締める。
見つめ返し、再び重なりあう影…
地上の織り姫と彦星を祝うかのように、一筋、流れ星が流れて消えた…
お星さま キラキラ
金、銀、砂子…―――