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□弐
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目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。いつもと違うのは、腫れぼったい瞼と頬と、酷く重たい自分の体だけ。
「夢じゃ…ないんだ……」
**灰色に沈む-弐-**
私はベッドの上で裸のまま、シーツを掛けられただけの恰好で寝かされていた。視線だけを動かして部屋を見回す。部屋にいるのは私だけみたいで…十代はいなかった。
「痛…っ」
僅かに身じろぎしただけなのに、鈍い痛みが下腹部に走った。…昨日の、行為のあとが。
「どうして…」
腫れた頬を涙が伝う。昨日の十代は怖かった。優しくなんてしてくれなかった。初めて与えられる痛みと恐怖に泣きじゃくるしかできなかった。気を失いかけても頬を叩かれて無理やり意識を戻され、繰り返し…。何度も、やめてって言った。そんな私を笑いながら、彼は行為を続けた。愛なんて、なかった。
「…うっ…、ひっく、ひっく……ふ、え…っ」
いつか、体を捧げる時が来るなら、想いを寄せたひとにと思っていた。愛し、愛される仲になったひとに抱かれたかった。そして両親がそうだったように、幸せな家庭を築くのが夢だった。
なのに…―
泣いていると、無遠慮に扉が開いた。
「起きたのか」
「!」
十代が、扉の前にいた。いつもの、執事の服装を着崩して。
眼は、まだあの鋭い光を宿したままだった。
「名無し」
「ひっ…や…、こない、で!」
緩くしていたネクタイを抜き取りながら彼が歩み寄る。私は痛みをこらえて上半身を起こし、シーツを胸元に引き寄せる。そして手近な机にあった本やぬいぐるみ、時計を…手当たり次第、彼に投げつけた。
「…ふぅん?まだそんな元気があったのか」
「来ないで!来ないでよぉっ!!」
出せる渾身の力で投げたそれを、十代は避けようともしなかった。それどころか、全て事もなげにはたき落しながら近づいてきた。
「これでも少しは反省したんだぜ?今日はちっとは優しくしてやろうかと思ったんだけどなぁ…。そうかそうか、名無しお嬢様は痛くされるのがお好きでしたか」
揶揄するように口元を釣り上げて。
「なら、お望み通り犯してやるよ。今度は逆らう気力も起きないくらいに、な」
「嫌…!」
彼はまた抵抗する私を力で押さえつけ、ネクタイで両腕を一纏めに縛り上げた。そして昨日のように馬乗りになるとシーツを取り払い、膝頭を割って十代が押し入ってくる。体の芯を引き裂かれる痛みに、私は悲鳴を上げた。