text

□想
1ページ/4ページ




ヨハンのアトリエから戻り、数日が経った。
十代が計り終えた水銀式の体温計を見て、7度9分か、と呟く。私はベッドに横になったままそれを見ていた。





「まだ高いとは言え、だいぶましになってきたな」

「う…ん……」





まだ内側に籠もるような、性感によるものではない熱で体は思うようにならないが、これでも彼の言うとおりよくなってきたほうだ。






「ここでぶり返されても困る。まだしばらくは寝てろ」

「ん…」

「何か食いたいもの、あるか?作れたら作ってやる」

「、つくれなかったら…?」

「…買ってきてやるよ」

「……プリン、食べたい…」

「よし、作る。寝て待ってろ」











あれから、私は熱を出して寝込んでいた。十代によって薬でくすぶる体は解消されたものの、翌日から酷い高熱が出たのだ。


それだけでも充分辛いのにお腹を壊し、その上生理まで始まってしまい、私はとんでもない三重苦に泣きながらベッドで数日を過ごした。もともと生理痛が酷い私には、まさに拷問だった。




十代は、そんな私を甲斐甲斐しく世話してくれた。氷枕と額に載せるタオルを1日に何度も交換したり、汗で濡れた体を拭いて寝間着を着替えさせてくれたり、食事もろくに摂れない私の為にお粥やすりおろした林檎のジュースなどの消化にいいものを作ってくれた。



身動きが取れず、お世話になりっぱなしの私は泣きながら何度も十代に謝った。…ヨハンのことも含めて、十代はもういいと言って頭を撫でてくれた。




「気にすんな。…まんまとあいつにヤられたのは気に入らねぇけど。それだって、俺の…―」

「十代…?」

「…何でもねー。それより、起きれるようになったら覚悟しとけよ」

「え…?っひゃ…!」

「その時は、徹底的に犯してやる…お前がどんな声で鳴くか、今から楽しみだ…」







耳元で囁く十代の声が耳朶を打つ。鼓膜と一緒に脳の髄まで震え、甘い毒を流し込まれたみたいにじんじんする。私は顔を真っ赤に染め、耳を押さえながら毛布を被った。今の私の顔はとても見せられないし、十代を見るのが恥ずかしかった。



十代は毛布越しに私の頭をぽんと叩く。…決して強い力ではなくて、怖くない。叩かれたというよりも、撫でられた感じに近かった。
私が恐々と顔を出すと、ちょうど十代の後ろ姿が扉の向こうに消えた。その時彼がふっと笑っていたように見えたのは、私の見間違いだろうか。



触れられた頭にそっと手を当てる。一人になってもまだ耳がじんじんしてこそばゆい。私は耳まで赤くしていた。これじゃあ、まるで期待してるみたいだ…。







「私…苛められるの、好きなのかな…」







無意識に呟いた自分の言葉がとんでもなく恥ずかしくて、私はまた毛布に顔を埋めた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ